【あした、親子で読みたい本】環境問題について考える本 3選
子どもの時に読んで感動した本は、大人になってもずっと心に残るもの。子どもたちが、自分だけの宝物になるような一冊に出合えるように、おすすめの絵本や読み物を元書店員でありJPIC読書アドバイザーの市川久美子さんにご紹介いただきます。
2015年、国際連合サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」が話題になりました。貧困・飢餓・健康と福祉・教育・ジェンダー平等・安全な水とトイレ・気候変動など17の目標が掲げられています。地球温暖化問題が叫ばれてから随分経ちますが、改善がなかなか見られません。水害も増えています。環境問題の本は、児童書でも関連本が多く出版され、書店や図書館に並んでいます。
環境と言えば、レイチェル・カーソンが浮かびます。『沈黙の春』で化学物質がもたらす環境汚染を書いています。地球の恩人とも呼ばれています。児童書で伝記も出ていますので機会があれば読んで頂ければと思います。
今回は環境問題に関する本を紹介します。
『森は生きている』(講談社)
日本は森林に恵みを受けて生活してきました。私たちの周りには木で作ったものがたくさんあります。森林では木の葉や木の実、葉や実についた虫たちが水に落ち、それらを魚が食べています。そして魚は、森林が日光をさえぎることで安心して生きていけるのです。
森林は雨が降っても、一度にどっと水が出てきたりたくさんの土砂を吐き出したりしません。ゆっくりと出てくる水は冷たすぎず、魚が住みやすくなります。木は防風林・防雪林・防火林などとしても役にも立っています。この本では、そんな森林のことや、生物多様性の基本がわかりやすく書いてあります。シリーズにはほかに『川は生きている』『道は生きている』『お米は生きている』『海は生きている』があります。(対象:小学校4年生~)
この本が難しい場合は、『ちきゅうがウンチだらけにならないわけ』(福音館書店)を読んでみるのもいいと思います。
作:富山和子
絵:大庭賢哉
出版社:講談社
定価:715円(税込)
商品詳細:『森は生きている』(講談社商品ページ)
『プラスチックモンスターをやっつけよう!』(クレヨンハウス)
レジ袋が有料になり、マイバックが主流になりました。子どもにとってもプラスチックごみは身近な問題になってきましたが、実際どうすればいいのかと悩む子どももいるでしょう。この本の初めには、プラスチックごみに苦しむ海の生き物たちの写真が掲載されています。漁業網に絡まって動けないアカウミガメとオットセイ。アホウドリの胃袋にプラスチックごみがたまり餌が食べられなくなって餓死した姿。ポリ袋に絡まってとべないコウノトリ。プラスチックごみの被害の多さに驚きを隠せません。
プラスチックは、いろんな商品に使われています。ごみとなった時の害、私たちに何ができるかなど、考えるヒントになります。(対象:小学校3年生~)
監修:高田秀重
絵:クリハラタカシ
編:クレヨンハウス編集部
出版社:クレヨンハウス
定価:1,760円(税込)
商品詳細:『プラスチックモンスターをやっつけよう!』(クレヨンハウス商品ページ)
『鉄は魔法つかい』(小学館)
著者は宮城県の気仙沼でカキの養殖を営む漁師です。カキのえさである植物プランクトンが増えないとき「雑木林にいって、腐葉土をとってきなさい」と研究者である今井丈夫氏が言いました。水に腐葉土を入れるとプランクトンが増えました。著者は「森には魔法使いがいる」と教えられ、30年かけてやっとその正体にたどり着きました。「魔法つかい」とは鉄だったのです。
著者は、鉄の研究で地球温暖化問題に希望を与えたジョン・マーチン氏、プランクトンと鉄の関係を調べた松永勝彦氏、「地球は鉄の惑星である」と言った長沼毅氏などの研究者に会って話を聞き、自らも気仙沼の川と海で調べました。水中写真家の田中正文氏からは、海に沈んだ艦船(鉄船)にサンゴが生息し、まわりを熱帯の魚たちが乱舞している光景を見た、という話を聞きます。まるで「英霊たちに大自然が手向けた花々のように見えた」と。
この本を読むと、森と川と海がつながっているのがよくわかります。環境問題が解決されることを祈るばかりです。(対象:小学校高学年~)
著:畠山重篤
絵:スギヤマカナヨ
出版社:小学館
定価:1,430円(税込)
商品詳細:『鉄は魔法つかい』(小学館商品ページ)