【あした、親子で読みたい本】動物を飼うことについて考える本
子どもの時に読んで感動した本は、大人になってもずっと心に残るもの。子どもたちが、自分だけの宝物になるような一冊に出合えるように、おすすめの絵本や読み物を元書店員でありJPIC読書アドバイザーの市川久美子さんにご紹介いただきます。
コロナ禍で自宅にいる時間が増え、ペットを飼う人が多くなったといいます。しかし、飼育放棄されるペットも増えていると。犬を飼育するのは確かに大変なこともありますが、飼う前に現状を知ることは大切かもしれません。今回はこういうことに関連した本を紹介します。
猫の絵本はいろいろありますが、犬の絵本はけなげな内容が多く、『カールデパートへ行く』(すえもりブックス)を見たとき、嬉しかった記憶があります。犬の性格が出ていて楽しかったのです。残念ながら、すえもりブックスは閉鎖したので購入できませんが、図書館ならあるかもしれません。
『うちのねこ』(アリス館)
ある日、家に野良猫だった保護猫がやってきました。うちについた途端、猫はソファーの下に隠れました。1か月してやっとそこから出てきたものの、なつかずに噛んだり引っかいたりします。少しずつ変化が見えても、やはり噛んだり引っかいたり。飼い主もめげそうになりつつ、夏、秋と時間だけが過ぎていきます。ある冬の特別寒い日に、猫は飼い主の寝室にやって来ました。しかし、飼い主と目が合った途端、やはり引っかいて噛んで出ていってしまいました。その1週間後、猫に変化が現れます。
1年近くそんな状態だった猫は、人間を信じることができるのでしょうか。泣きたくなる日もありながら、あきらめずに過ごした飼い主と猫に、ただただ頭が下がる思いです。幸せになって欲しいと願ってしまいます。
作:高橋和枝
出版社:アリス館
定価:1,540円(税込)
商品詳細:『うちのねこ』(アリス館商品ページ)
『アンジュール』(BL出版)
ある日、車の窓から犬が捨てられます。犬は車を追いかけますが、やがて見えなくなってしまいました。車が通るとそちらに行ったり、遠くに人が見えると期待をしたり、しかしそれもむなしく、犬は空を見上げて吠えます。
絵はデッサンで描かれていますが、飼育放棄された犬の表情や仕草がひとつひとつ描かれ、内面まで読み取れる迫力です。話の最後は一つの光が見えます。緊張して見ていた読者も少しはホッとできるでしょう。
作:ガブリエル・バンサン
出版社:BL出版
定価:1,430円(税込)
商品詳細:『アンジュール』(BL出版商品ページ)
『犬たちをおくる日 この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』(金の星社)
表紙の犬の目を見たとき、私は「この子(犬)どうしたんだろう。寂しそう。何か言いたげだな。」と、本の前で足が止まりました。すぐ購入して読みました。犬と猫の殺処分のお話でした。人間の飼育放棄のために数多くのペットたちが殺処分にされているのです。飼われていた犬や猫が、飼い主が迎えに来てくれると最後まで信じている目に、人間の罪深さを感じます。最近は殺処分ゼロを目指す自治体も増え、それを支えるボランティア団体もあるようです。この本を読むことで、ペットを飼うならどんな覚悟がいるのか、知ってほしいと思います。
著:今西乃子
写真:浜田一男
出版社:金の星社
定価:1,430円(税込)
商品詳細:『犬たちをおくる日 この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』(金の星社商品ページ)
市川 久美子(いちかわ くみこ)
元書店員。JPIC読書アドバイザー。1981年地域文庫の立ち上げに携わる。後に家庭文庫も開く。同じ小学校で15年以上読み聞かせ・語り・ブックトークを行い、作家さんなどの授業も15年企画。市立図書館・中学校図書館勤務の後、1999年より大型書店児童書担当として20年勤務。退職後は、児童書関連の執筆・講演を行う。著書に『ねんねのうた』(佼成出版)がある。