まんがでわかる! 意外と身近な名曲クラシックの世界・第7回「滝廉太郎」
クラシック音楽ってむずかしい……?
いえいえ、そんなことはありません! クラシックはいわゆる当時の流行ソングで、その時代を生きる人々にさまざまな場面で親しまれ、愛されてきました。
長い時を経た現代でも、テレビや町のなかで、私たちは気がつかないうちにたくさん耳にしています。
作曲家とその有名な曲のお話を、『伝記 世界の大作曲家 15人の偉人伝』のまんがのシーンと共に紹介しています。
ぜひクラシック音楽と仲よくなってくださいね🎹🎵
明るい春の想像ふくらむ、色あざやかなメロディー『花』
「春の うららの 隅田川(すみだがわ)~♪」の歌詞ではじまる、華々(はなばな)しくも、清らかで美しいメロディーが印象的なこの曲は、丸いメガネがトレードマークの滝廉太郎(たき れんたろう)が作曲した『花』という曲です。
当時、隅田川でさかんにおこなわれていたボート競技で活気づく春の様子が歌詞の中にえがかれていて、墨田(すみだ)区では「区民の愛唱歌」として認定されています。
ほかにも、東京メトロ銀座線の浅草駅で発車メロディーとして聴くことができたり、合唱曲として子どもから大人まで広く歌われているので、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
「花」は、滝廉太郎が春夏秋冬それぞれの情景を表現した4曲が収められている歌曲集『四季』の1曲目で、『納涼(のうりょう)』『月』『雪』と続きます。
表情豊かな歌詞とのハーモニーをぜひ聴いてみてくださいね。
“日本音楽のあけぼの”滝廉太郎、オルガンとの出会い
滝廉太郎は1879年、8人兄弟の長男として東京の港区芝で生まれ、12歳のときに、父・吉弘の仕事の都合で大分県に引っ越します。
滝家は九州日出藩(ひじはん)の家老出身で、廉太郎の父親は内務省(ないむしょう)に務めたり、初代総理大臣・伊藤博文の秘書をしたりしていた役人でした。
廉太郎は東京にいたころ、よく教会でオルガンや讃美歌(さんびか)を聴いており、家には当時はめずらしいヴァイオリンやアコーディオンがあったので、幼少期から自然と音楽に親しんでいました。
学校で唯一オルガンをひける先生と出会い、オルガンを教えてもらうちに、学校内で歌の伴奏(ばんそう)をするようになるほど腕が上達します。
音楽で東洋と西洋のかけ橋に! 滝廉太郎の短くも豊かな一生
音楽の道をこころざすも、自分と同じ役人になってもらうことを強く望んでいた父親に、その夢をなかなか認めてもらうことができません。
しかし、当時西洋建築家として活躍していた18歳年上のいとこ・滝大吉の説得のおかげもあり、1894年に東京音楽学校(現在の東京芸芸術大学)の受験のために上京し、努力のかいあって最年少の15歳で合格しました。
学校の厳しい授業についていけずにやめていく学生が多いなか、廉太郎は学問にはげみ、演奏会でピアノの独奏したり、ドイツ人教師から作曲を学んだりと、めきめきと力をつけていきます。
廉太郎は、作曲を学んでいくうちに「日本人の作った詩に、日本人の心を歌う曲が作りたい」と強く思うようになりました。
それも、当時の小学校では、教科として「唱歌」の時間があり、子どもたちは授業のなかで多くの歌を歌っていました。しかし、それらの歌は西洋の音楽に日本語の歌詞をつけたものばかりだったのです。
本格的に作曲活動をはじめた廉太郎は、日本の美しい景色や人びとの日常を見事に取りこみ、次々に新しい曲を生みだします。
「荒城の月」は西洋の作曲法を用いながら、日本に古くから伝わる方法でメロディーが作られていて、廉太郎が残した作品のなかで最も愛される歌のひとつになっています。
そのほか、「もういくつ寝ると~」でおなじみの『お正月』や、『雪やこんこ』、『鳩ぽっぽ』など誰もがかならず耳にしたことがある曲も、実は滝廉太郎が作曲した唱歌なのです。
1901年には文部省のすすめでドイツへ音楽留学に向かった廉太郎ですが、2か月がたったころ結核(けっかく)をわずらい、日本へ帰国して療養(りょうよう)することになりました。そして翌年、23歳の若さでこの世を去ります。
日本と西洋の音楽をかけ合わせ、当時の日本人に新しい世界をみせた滝廉太郎。
私たちの心に寄りそう美しいメロディーは、いつまでも色あせることなく輝きを放っているのです。
第7回「滝廉太郎」はいかがでしたか?
全7回にわたってお届けした「身近なクラシック」シリーズはこれで最終回です。
はるか長い時代を経てもなお世に残り、人びとに愛されつづけるクラシック音楽。
興味をもったら、ぜひこのマンガを読んで作曲家たちの生涯に思いをはせてみてくださいね。
前回の記事はこちら
まんがでわかる! 意外と身近な名曲クラシックの世界・第6回「ドヴォルザーク」
Information
出典
『新版 伝記世界の大作曲家―15人の偉人伝―』
学研プラス(編)
監修・指導:ひの まどか
定価:1,870円(本体1,700円+税10%)