第三回
これまでのあらすじ
ベルは学校で、母親や自分の悪口を聞いてしまい、傷ついていた。
一方ショーンは、父のようなりっぱな騎士(きし)を目指しながら、
うまくいかずに落ちこんでいた。
そんな二人が、ついに出会う日がおとずれる…。
↓第三回、はじまりはじまり!
レッスン4 ショーンとベル
家に帰ると、めずらしく父がいた。
ほぼ三か月ぶりに、こうえきからもどってきたのだ。
「父さん!」
だんろの前の安楽イスにすわった父に、だきつくベル。
他人がいるところでは、お父様、とよぶベルだが、二人きりの時には、やはり父さんである。
「元気そうだな」
父はベルのひたいに口づけした。
たくましく日焼けした肌(はだ)。
いつでも夢(ゆめ)をわすれない、灰色(はいいろ)の瞳(ひとみ)。
ベルの父は、商人というよりも、冒険家(ぼうけんか)のようだ。
「学校は楽しいかい?」
「……う」
ベルのひょうじょうがこおりつく。
「学校の話が出ると、お前はあまり楽しそうな顔をしないね」
「そ、そんなことないよ!」
アリエノール学園は、王国で一番のおじょうさま学校だというひょうばんを聞き、ベルが自分から行きたいとせがんで入学した学校なのだ。
「つらいことにたえるのもまた勉強、という考え方をする人もいるがね」
父はベルの頭に手を置いた。
「わたしはお前に笑顔でいてほしい。そう、本当の笑顔のままで」
「本当の……笑顔……?」
ベルはふと思いだす。
自分の母親をばかにした、取りまきたちの笑顔を。
そして、決して笑うことのなかった、あの銀髪(ぎんぱつ)の少女のやさしい瞳を。
「……むずかしいよ、それ」
ベルは首を横にふった。
「勉強よりむずかしい」