第四回
これまでのあらすじ
ベルとショーンは、初対面(しょたいめん)で大げんかをするが、
おたがい、なぜか気持ちが晴れやかになっていた。
いっぽうアーエスの家はというと…。
レッスン5 アーエスの危機(きき)
今日は花がよく売れた。
あの貴族(きぞく)の男の子が選んでくれたせいだろうか?
あれから毎日、花をもらいに行くのだが、男の子はきれいな花をいつもたくさん用意して待っていてくれるのだ。
貴族は好きではないが、あの子だけはそんなに悪い人間という気がしない。
名前は知らないので、アーエスはあの男の子のことをお花屋さんとよぶことにした。
お昼すぎにカゴが空になったので、アーエスはいったん家にもどる。
南街区でも最もまずしい地区にある、部屋ひとつだけの小さな家だ。
「帰ったかい?」
明かりのない室内に入ると、男がつえをついて、くずれかけたイスから立ちあがった。
アーエスの父である。
「これ……今日のかせぎ」
アーエスは、十枚ほどの銅貨(どうか)を父にわたした。
かつて、鉱山(こうざん)のじこで大けがを負った父は、今でも外で働くことができない。
働いているのは、アーエスと母。
母は明け方近くまで帰ってこない。
おさない弟たちと妹のめんどうを見るのは、アーエスの仕事だ。
今、二人の弟と赤んぼうの妹は、ワラをしいただけのしんだいで固まるようにしてねむっている。
「すまないな」
父は、まくら元の小さな木箱に銅貨をしまう。