第六回
あらすじ
ベルとショーンは、アーエスを連れ去った男のあとをつけた。
すると、そこには男のなかまがいて、子どもたちが閉じこめられていた…。
二人はアーエスを救おうとするが、逆に見つかってしまい…。
「かかれ!」
号令をかける商人。
と、その時。
「……意志と言葉がおりなす呪波(じゅは)よ、強大な力を持って悪を打ちくだけ……レガル!」
アンリは右手をすっと上げ、短い言葉を唱えた。
いっしゅん後。
パーン!
用心棒たちのにぎる剣の刃が、ブウンとしんどうしたかと思うと、細かなはへんとなってはじけ飛んだ。
アンリが唱えたのは魔旋律(ませんりつ)。
呪波とよばれる魔力をぞうふくし、魔法を発動させる呪文(じゅもん)の一種だ。
「……ま、まさか?」
「ほんとうに魔法使いの……アンリ?」
顔を見合わせるベルとショーン。
「こ、こんなガキ、武器なんぞなくても!」
用心棒たちは使い物にならなくなった剣をすて、アンリになぐりかかろうとする。
しかし。
「むだだよ。深きねむりがなんじらを包みこむ……ドルム!」
魔旋律ともに、うすべに色のきりがアンリのまわりに発生した。
そのきりにふれたとたん、男たちは全員、その場にくずれ落ちる。
「もうのがれるすべはないよ」
アンリは商人を見た。
「……きさまがあの、有名な宮廷魔法使いとはな」
商人は頭をふる。
アンリはかつて、世界をほろぼす力を持つと言われた怪物(かいぶつ)をたおした魔法使い。
かなわぬことをさとり、これ以上、ていこうする気はないようだ。