発表! レンの新魔法!?
1
ここは、王都アムリオンの南門を見下ろす緩やかな丘の上。
三日月が見下ろす、ヒースの草地である。
レンはその草原の真ん中で、右手を高く上げて魔旋律を唱えていた。
「大地よ、自らをうがち、無を生み出せ! シャカット・ピスオミ!」
小さなうずが草の上に生まれ、それがあっという間に大きくなって、地面に人間ひとりがすっぽり入るくらいの穴が開いた。
「ほら、すごいだろ?」
レンは誇らしげに胸を張った。
「今までの落とし穴の魔法よりも、ずっと早く穴が作れるんだぞ」
「うーん……。レン、あなたを傷つける気はないんだけど」
穴をのぞき込んだトリシアは首を傾げ、慎重に言葉を選ぼうとするが……。
「ショボすぎですわね。あなたのどうしようもなく地味な性格が、よく表れてますわ」
ズバリ言い放ったのは、キャスリーンだ。
「地味って……そ、そうかなあ」
レンは肩を落とす。
「新魔法を作ったって自慢するから、どんなにすごい魔旋律かと思ったんだけど……正直、期待はずれ、みたいな?」
トリシアは頭をかいた。
「こんなことのために、毎日忙しい、この王位継承権第二位である、麗しのキャスリーンを呼び出すなんて」
キャスリーンはフンと鼻を鳴らし、容赦なく続けた。
「あなたは時々、新魔法を作ったと言って私たちに見せようとしますけれど、どれひとつ、役に立つ魔法だったことはありませんわね」
実際、今までにレンが編み出したのは、猫が爪とぎできないように柱をツルツルにする魔法や、腐った卵を呼び寄せる魔法や、喋る速さを五十倍にする魔法。
どれも今ひとつ、派手さに欠ける魔法ばかりである。
特に、喋る速さを上げる魔法は、話の内容が誰も聞き取れなくなるという、まったく意味のない魔法だった。
「まあ、がっかりしないで。そのうち、すごい魔法だって作れる……かも知れないから」
慰めにならない言葉をかけるトリシア。
「あなたはちょっとしたお利口さんかも知れないですけど、アンリのような天才ではないのです。諦めなさい」
キャスリーンは、とどめの一言を発した。