1
体の調子を崩す人が増え、診療所もいそがしくなる秋の初め。
「ねえ、手伝ってよ!」
ヘビののどに薬をぬりながら、トリシアは待合室にいるレンを呼びました。
「手伝いなら他にいるだろー、そこにー」
長イスに座って本を読んでいるレンは、クル歌いながら薬品棚の整理をしているセドリックの方を指さしました。
「うーん! 我ながら見事な仕事っぷりだねえ! はっ! たっ! くるりっと!」
慣れてきたのか、セドリックも薬のビンを分けて並べるのがだんだん早くなってきています。
「ボーとしてるだけだったら、お茶出さないからね!」
トリシアは身をかがめて待合室をのぞき、レンをにらみました。
「あのね。この診療所でいつもお茶を用意しているのは、この僕」
本を置き、肩をすくめたレンは、ちらりとセドリックを見ます。
「だいたい、なんであいつにまでお茶を出さなきゃいけないんだよ?」
「今のレンより、ずっと役に立ってくれてるもの」
トリシアはベエーッと舌を出しました。
「じゃあ、お茶もあいつにいれてもらえばいいだろ?」
レンも言い返します。
「ああ、愛する美少女と僕の親友が争っている! この、僕のためにっ!」
二人の間に割り込み、頭を抱えて見せるセドリック。
「君は関係ない! だいたい、トリシアのどこが美少女だ!?」
「黙ってて! それにレン、ひとこと余計!」
レンとトリシアはほとんど同時にどなると、そのままにらみ合います。
そこに。