大混乱、ダッシュの新生活
1
それは、トリシアたちの一行が、ドラゴンの谷から王都に戻ってきた日のこと。
「ここがアムリオンの王都かよ!」
街壁の前に立ったダッシュは、腰に手を当て門を見上げてピュウッと口笛を吹いていた。
「この大きさ、さすがに人間が山ほど集まっているだけのことはあるってことか。ま、ドラゴンの谷ほど広かねえけどな」
「何言ってんのよ? あの谷の十倍は広いでしょが?」
そんなダッシュに白い目を向けるベル。
「……見栄っ張りな……は虫類……」
と、アーエスの反応も冷ややかだ。
「んだとおっ!」
ダッシュは袖をまくり、声を荒らげる。
「こら、怒鳴るんじゃないの!」
そんなダッシュの耳を引っ張って止めたトリシアが、シャーミアンに尋ねた。
「けど、これからどうするの? とりあえず、こいつの住む場所ぐらいは決めないといけないでしょ?」
「うむ。……だが、騎士団本部には、今のところ空いている部屋はないな」
副騎士団長のシャーミアンは、あごに手を当てて考え込む。
「だったら、もう住むとこは、あそこしかないんじゃない?」
エティエンヌがダッシュの肩に手を置いて、ニ〜ッと笑った。