第三回
騎士団長は続けた。
「剣の訓練のほうはどうだ?」
「つ、続けています」
ショーンの目が泳ぐ。
続けてはいるが、上達はしていないのだ。
「そうか……」
騎士団長はほんの少し、まゆをひそめる。
「お前は母親ににて、頭がいい。学問の道に進もうとは思わないか?」
「いえ。ぼくはサクノス家の人間として、騎士を目指します」
キッパリと答えるショーン。
「サクノス家の名にこだわることはないぞ」
騎士団長は言った。
「学問を続けても、騎士になることはできる。自分の才能を試してみないか? 私の友人に、少し変わった学校を開いている若者がいるのだが……」
(……父上はやっぱり、ぼくのことを騎士にはふさわしくないと思っているんだ)
ヒザの上に置いた自分の両こぶしに、ショーンはしせんを落とす。
「今のお前は」
騎士団長は首を横にふった。
「どこか自分を追いつめているように見える。私には、それがつらいのだよ」
「……」
自分の弱さが父を苦しめている。
父自身の口から初めてそのことを知ったショーンは、強くくちびるをかんだ。
「学校の話はおことわりします。ぼくは、ぼくの力で必ず……必ず騎士になってみせます」
ショーンはそれだけ言うと、父の部屋を後にした。