第一回
「へえ~、ここでやるんだ、試験?」
よくじつの午後。
西街区の一画にある白天馬騎士団本部にやってきたベルは、これから試験が行われる訓練場を見わたした。
「意外と広いじゃない?」
「当然だ。わが白天馬騎士団は、アムリオン王国最大の騎士団だからな」
ショーンはむねを張る。
「……たくさん……いるね……試験……受ける人」
つぶやくアーエス。
試験会場に集まった受験者の数は、八十人ほど。
年は、五、六才から二十才以上まで。
ショーンはちょうど、真ん中ぐらいだ。
「女の子もいるし」
ベルは、受験生の中に少女が何人もいるのを見て、ちょっとおどろく。
「ふ、当たり前だろう? 白天馬騎士団は実力主義。騎士にふさわしい能力を持つものであれば、男であろうと女であろうと、貴族(きぞく)であろうと庶民(しょみん)であろうと、だれでも騎士になれる。そのしょうこに……」
ショーンは、試験会場の一番おくにもうけられた、試験監督(かんとく)の席にすわる、背の高い騎士を指さした。
むねにバラのちょうこくがあるよろいをまとった、りんとした表情の女性(じょせい)だ。
「副騎士団長は女性で、しかも、出身は貴族でないのだぞ。すごいだろう?」
「だから、どうしてあんたがいばるのよ!」
「……ねえ……あそこに……いる……人……って?」
アーエスは、副騎士団長のとなりにすわる青年を見て、ちょっと首をかしげた。
金髪(きんぱつ)の長髪に、青いひとみ。
すらりと長いあし。
ショーンの家に行った時に、何度か顔を合わせたことがある青年である。
「う」
ショーンの表情がこわばった。
「……エティエンヌ……ぼくの三番目の兄だ」