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しばらくして。
トリシアは木箱から出された。
「美少女怪盗のアジトによ〜こそ!」
目の前でウインクしたのは、もちろん怪盗おしゃべりフクロウ。
その後ろには盗賊のヴォッグと悪徳商人のマイルズもいる。
「私を恨まないでくださいね〜。私はおしゃべりフクロウさんを仕方なく手伝っただけなんですから」
マイルズが弁解した。
あたりは暗いが、どうやら幅の広い通路のようで、アーチ状になった天井がずっと奥まで続いている。どこかから拾ってきたようなテーブルや椅子やベッドが並べられているが、床にはあまりきれいとは言えない水が流れていて、鼻を突くような悪臭が漂っていた。
「ここは?」
トリシアは眉をひそめる。
「聞いて驚け! ここはな、アムリオンができたばかりの頃に使われていた大昔の下水道の中だ」
トリシアの質問に答えたのは、ヴォッグだった。
「街のあちこちにつながってるからよ。俺たちのアジトにピッタリって訳さ」
「ま、くつろいでよ。あんまり対したものは出せないけどさ」
おしゃべりフクロウはトリシアを椅子に座らせると、テーブルにお茶とクッキーを用意した。
「下水道の中で物なんか食べたら、お腹こわすって」
トリシアはうんざりした顔で続ける。
「……セドリックに頼まれたんでしょ? まったく、なんであいつなんかの悪だくみに付き合うのよ」
「だって、金貨30枚だよ? それだけくれりゃ、あんただって引き受けるでしょ?」
おしゃべりフクロウは金貨の入った袋を取り出し、ジャラジャラと鳴らした。
「う、否定できない」
正直、トリシアも金貨は好きだ。ただ、あまり触る機会がないだけで。
「それにさ、あたしたちに誘拐に頼んどいて、そのことをわざわざあんたに教えにくるんだよ? そんなに悪い奴じゃないじゃん」
と、おしゃべりフクロウ。
「だから、よけいに手に負えないの」
トリシアはうんざりというように首を横に振る。
「で、あとはセドリックを待つだけなんだけど。……遅い」
おしゃべりフクロウは腕組みをして眉をひそめた。
と、そこに。