設立者 古岡秀人
(株)学習研究社社長(設立時)
回想すれば、私が5歳の時に、筑豊炭田の坑内事故で、父を一瞬のうちに失い、母は貧苦の生活に耐えながら、私ども兄妹を育ててくれました。幸い、学費が官費支給であった師範学校に入学する機縁を得て、大過なく今日に至ることができました。
高等学校を卒業していれば、今日の社会構造の中において、その人なりの才能と努力をもってすれば、充分に伍していけることは、既に産業界や文化面などの諸分野に亘って、多くの人材が活躍していることで立証されます。また、大学進学への途を志ざせば、資格において、それも可能であり、大学に入学すれば、多くの育英会の援助を享受することもできるでしょう。
現在の社会にあっては、最低高校卒業までは、親の子に対する責任と自覚し、吾が子への愛情が高校進学率を高めているともいえましょう。
高校卒業が、人生の初期の段階のパスポートであり、進学率が高まれば高まるほど、生徒の家庭の事情が多様化することは否めません。殊に一家の大黒柱である父を、不時の交通事故とか病死などで失い、又は、やむなき事情のため離婚せざるを得なくなった母親など、不幸に直面しながらも生活を支え、子女の教育に献身しなければならない家庭も、世の中には非常に多いと仄聞(そくぶん)しています。
こういう家庭環境の中にあって、母親が生活苦と闘いながら、せめて吾が子の高校卒業を心から念願し、その子もまた母親の労苦に報いるべく、向上心を持って勉学に勤しもうとする方々に対し、私は私のできる可能な範囲で、なんらかの尽力をすることはできないだろうかと考えた次第であります。
ここに微財を基金として、公益法人古岡奨学会を設立し、本事業を通じて、いささかなりとも国家社会に貢献する人材の育成に寄与しようとするものであります。
以上
(設立許可昭和55年6月)