お江戸を拝見

セイコー時計資料館

 墨田区東向島にあるセイコー時計資料館は、1981年の開館。東洋、西洋の時計技術の進歩や、100年以上に渡るセイコーの歴史を、数々の展示品や文献、ビデオなどで見ることができる。和時計もさまざまな種類のものが所蔵されていて、江戸時代の時計技術の高さを伺い知ることができる。このページでは、そのほんの一部を、ちょっと拝見!
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■一挺天符(いっちょうてんぷ)式の掛時計
 「一挺天符」は、棒天符が1本付いている。鐘の下の、分銅がつている櫛歯状の横棒が棒天符で、往復運動をして、振り子のように時計の動く速さを制御する(=調速機)。毎日、明け六つと暮れ六つに分銅の位置を移動して、時計の速さを調節する。
 「掛時計」は、柱や壁に掛けて使う。下のひもの先には錘(おもり)がついていて、その重さで動く。
 写真の物は、指針は固定で、文字盤が回転する。目覚まし機能付き。


■二挺天符(にちょうてんぷ)式の櫓時計
 「二挺天符」は、棒天符が2本付いている。明け六つと暮れ六つで自動的に切り替わり、昼は上の棒天符、夜は下の棒天符が動く。そのため、分銅の移動は毎日する必要がなく、季節の昼夜の長さに合わせて、24節ごと(15日ごと)にそれぞれの分銅の位置を移動する。
 「櫓時計」は、時計本体の下のひもと錘が板で覆われていて、櫓のような形をしている。掛時計と同様に、錘の重さで動く。
 写真の物は、文字盤が固定され、指針が回転する。目覚まし機能付き。櫓台前扉に徳川葵の紋所入り。


■波板式の尺度計
 「波板式」は指針についているヒョウタンの駒を、季節に合わせて左右に移動させ、駒が指している波形の線から、時刻を読み取る。
 「尺度計」は、掛時計から考案されたもので、錘が下がるのに合わせて指針(写真下部の横棒)が下がっていく、縦型の時計。


■割駒式の枕時計(右)
 「割駒式」は、時計の速さは常に一定で、文字盤の時刻の表示がひとつひとつ、移動できるようになっている。季節にあわせ、昼や夜の時刻の位置を変える。
 「枕時計」は、動力にぜんまいが使われるようになって作られ始めた。掛時計や櫓時計のように下にさげる錘がないため、写真のように箱の形をしている。
 写真の物は、円天符(棒天符の後に作られるようになった円形の天符)が調速機に使われている。


■円グラフ式文字盤の掛時計
 「円グラフ式文字盤」の指針は、内側の文字盤の下から、自動的に出たり入ったりして、1年間かけて長さが変わるようになっている。季節によって長さが変わる指針の先端が指している、外側の文字盤の線から、時刻を読み取ることができる。
 写真の物は、調速機に、後部に付けられた振り子が使われている。


■印篭(いんろう)時計
 印篭は薬などを入れて持ち歩いた容器。そこに機械式時計を仕込んだのが「印篭時計」。動力はぜんまいで、鍵穴に鍵を入れて巻く。調速機には円天符が使われている。
 根付(ねつけ)にも趣向が凝らされいて、写真の左は象牙製、右は木製。


機械時計以外の時計

■香盤時計
 抹香(粉末状の香)を線状にしき、火を着け、香が燃える速さで時間を計る。一定の間隔に時刻札を立てた。


■携帯用精密日時計(左)と、紙製の日時計(右)
 庶民が時刻を知るのに、日時計も使われた。
 写真(左)はアナレンマ式日時計の精密な物で、四隅に時計を水平にするためのねじが付けられている。
 写真(右)は紙製の日時計。紙を水平に持ち、24節(15日)ごとの短冊を垂直に立て、影の長さで時刻を計る。(つまり、通常の日時計は太陽の方角で時刻を知るが、この日時計は太陽の高度で時刻を読み取る。)時刻が分かると、左の表と中央下の円を使い、方角を知ることもできる。


取材協力=セイコー時計資料館