今月のお噺は
真夜中頃、男が一杯十六文の流しの蕎麦を注文した。使っている丼からダシの取り方、竹輪の切り方、蕎麦の打ち様までさんざん褒めちぎって食べ、代金を支払う。「銭は細っけえから手ェ出しな。ひい、ふう、みい、よ、いつ、むう、なな、や、おやじ、今何時(なんどき)だ?」「九つで」「とお、十一、十二…」と、時を聞いて一文ごまかした。これを脇で見ていた与太郎、感心して翌晩まねをする。「きたねえ丼だね。箸は割れてるし、ツユ濃いよ!蕎麦じゃなくてうどんだわ、こりゃ!まあいいや。銭は細っけえよ、手ェ出しな。」「ひい、ふう、みい、よ、いつ、むう、なな、や、」「おやじ、今、何時だ?」「四つで。」「いつ、むう、なな、や、この、とお…」おあとがよろしいようで。