TOPトピックス > 最近の脳科学の成果と幼児教育

トピックス 脳科学と教育

2009年6月5日

最近の脳科学の成果と幼児教育

 高齢者の認知症と運転免許について、新しい制度が適用されるようになるなど、高齢化と脳の機能低下については研究とその実際的運用が進んでいます。しかし、幼児や児童など発達期における脳の研究は、まだまだわからないことが多いのです。もちろん、子どもの脳が成人や高齢者と大きく異なるわけではありません。音読や簡単な計算をすると、大人と同じように児童の大脳前頭前野も活性化します。その成果は学校教育にも取り入れられて、朝の授業の前などに音読や計算をしている学校がふえているのは事実です。大脳を活性化することで、授業に取り組む姿勢が積極的になり、考える能力も高くなるのか、学力も向上しているのです。また児童にとって早寝早起きと朝食をとることの大切さが言われているように、幼児、学童期に基本的生活習慣をしっかり身に着けることは、心身の健康に良い成果を出すと共に、学力向上の基盤であるようです。

 学研では、幼児を対象に感性や興味の発達を考えたうえでの、知的発達をはかる教室の運営をおこなってきました。いわゆる「文字・数・ちえ」の能力教室です。ここにきて、近年の目覚しい脳科学の成果を取り入れた教室を始めています。これは学研教育総合研究所の脳力研究開発室がプログラム開発に協力したものです。まだ、一部の幼児を対象としたもので、全国で限られた場所でしか運用されていませんが、成果も着々とあがってきています。基本は脳を刺激したり、リラックスさせたりするプログラムになっています。入室の頃は騒がしく、お勉強や遊びに取り組むのが難しい子もいます。それが教室体験を積むごとに、落ち着いて課題に取り組むようになるのは指導者にも驚きであったようです。

 また、主に幼児の脳の発達期には「臨界期」と呼ばれるときがあり、言語、音楽、数などの習得にふさわしい時期があるのではないかという説があります。現在、全国的な規模で、この臨界期の研究と実験が行なわれていますが、教育上極めて大きな問題です。安易な臨界期説に基づいた教育は行なうべきではありませんが、大切な幼児、児童の時代に教育は何をなすべきかを問われ、実践し続けなければなりません。更なる研究の進展に期待したいと思います。

(客員研究員 加藤信巳)

一覧に戻る

▲このページのトップに戻る