2010年6月16日
第10回認知症ケア学会発表資料(抄録、一部改訂)
【演題】通所介護施設における脳活性アクティビティの効用
継続的な脳活性トレーニングによる「認知症予防」への挑戦
- 【目的】
- 「脳活性をねらいとするアクティビティ活動」(以下、脳元気タイム)を通所介護施設(以下、通所施設)において連続的かつ継続的に実施し、参加者の認知機能をはじめとした脳機能維持または機能低下の緩和、および社会性をできるだけ維持させることを目的とする。
- 【方法】
- 東北大学と学研の共同研究で、大脳の前頭前野の活性効果があると判定されたアクティビティを元にプログラムを立案。計算や書き取りを中心とした「学習系アクティビティ」と、投擲ゲームなどを中心とした「運動ゲーム系アクティビティ」で構成される。正味実施時間はそれぞれ10分程度である。また、通所時だけでなく通所回数に応じて自宅用の課題(宿題)プリントを課している。「介入実験」を東京都内にある通所リハ施設で実施し、評価にはMMSE*1、FAB*2 を用いて介入前と3ヵ月後に検査を実施した。その実績を基にB区にある通所施設で開業時から約3年間実施(その後に開業の2施設でも同様に実施)し、通所開始時および数ヵ月後毎に測定した。また利用者本人および家族、介護スタッフのアンケート調査を実施した。利用者の属性は、全て要支援~要介護の高齢者でアクティビティへの参加制限はしていない。男女比は男性36:女性64である。
- 【倫理的配慮】
- 通所施設利用開始時に説明する「重要事項説明書」に、脳元気タイムの実施および聞き取り式脳機能検査の実施について明記し、通所施設の相談員より説明を行っている。
- 【結果と考察】
- 3ヶ月間の介入実験では介入群がMMSE、FABともに平均点が有意に改善し、非介入群は統計的な改善は見られなかった。その後3施設での約3年間の継続実施でも脳機能低下の防止や機能維持の効果が見られた。利用者本人、介護スタッフのアンケート調査からは、利用者の意欲向上および職員の意識向上がうかがえる。また、自宅での課題を課したことが利用者の在宅生活時への働きかけという新しい取り組みにもつながった。
(五郎丸 徹 研究員)
*1 MMSE:Mini Mental State Examination
見当識、記憶、言語、注意、計算、構成などの多領域の認知機能を包括的に検査
*2 FAB:Frontal Assessment Battery at bedside
短時間にベッドサイドで前頭葉機能を検査
前頭葉機能障害に鋭敏とされる検査を集めたもの
ポスターセッション資料(PDF)
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- 正式出典名:
通所介護施設における脳活性アクティビティの効用 継続的な脳活性トレーニングによる「認知症予防」への挑戦(学研教育総研)より
- 短縮出典名:通所介護施設における脳活性アクティビティの効用(学研教育総研)より
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