TOPトピックス > 「いじめ」問題の背景(1)「友だちと仲良くしなさい」と父から教わる子は19%!

トピックス 学校教育

2006年11月10日

「友だちと仲良くしなさい」と父から教わる子は19%!
―「いじめ」問題の背景(1)-

 「いじめ」による子どもの自殺問題は、各メディアが大きく取り上げたこともあり、深刻な社会問題となっています。
 「いじめ」の動機の理由は、主に「性格や容姿が悪い」「どんくさい」「自己中心的」「良い子ぶる」「仲間と行動をともにしない」などといったことで、それ自体は古今東西、人間が集うところ避けられない感情のように思えます。

 しかし近年の特徴として、「無視」「いじり」(仲間のように扱いながら特定の子を集中的にからかうこと)「携帯に誹謗・中傷のメールを送り続ける」など、「いじめ」がより陰湿化し見えにくくなっているといわれています。さらに、いじめを止める者がいない、加害者の保護者が子どものそれを認めず謝罪しないことがある、といったことも起きています。

 こうした現象の背景の一つとして、子どもと保護者ともに規範意識が低下しているといわれています。例えばある国際比較調査では、子どもが保護者から「友だちと仲良くしなさい」と言われるのは、父親からの場合で韓国66%、アメリカ79%、イギリス64%、ドイツ63%に比べ、日本はわずか19%に過ぎません。母親からでも、韓国78%、アメリカ67%、イギリス6%、ドイツ69%、日本55%と、この5カ国ではもっとも低い数値です。(中教審答申「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について」中間まとめより。以下同)

 また、「うそをつかないようにしなさい」と言われるのも、父親からは韓国73%、アメリカ78%、イギリス78%、ドイツ58%に対し、日本はわずか29%。母親からは韓国78%、アメリカ79%、イギリス82%、ドイツ63%に対し、日本は41%とこれも5カ国で最低です。

 このように友だちを大切にする、人とは正直に接するといった規範を、日本の子どもがいかに教わっていないかがわかります。

 それでは、保護者自身はどのように考えているのでしょうか? 上記の答申には、日本の父親の51%、母親の41%が、「他人を思いやる心」を学校で教えてほしい、と答えている調査が出ています。人への思いやりをわが子に教えることを放棄している保護者が半数もいるのです。

 規範意識の向上は、教育再生会議など政府の「教育再生」の目的の一つですが、人へのやさしさも含め、保護者や大人の意識も向上しないと、「いじめ」問題の解決の糸口は見つからないように思えます。

*答申「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について」(中間まとめ)は、子どもたちが勉強だけでなく日常生活や将来に対し意欲が欠如していることを、遊びや体験活動、メディア、生活習慣といった観点からデータを集め分析しています。これに関し、衞藤先生にインタビューを行なっています。詳しくは「NEW教育とコンピュータ」12月号(11月15日発売)をご覧下さい。また、同誌連載の「『教育大変動』を語る」のバックナンバーはこちらからご覧になれます。 シリーズ『教育大変動』を語る

(古川隆研究員)

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