第一回
(どうして……こんなに?)
まずしさというものを初めて目の当たりにしたベルは、言葉を失う。
しかし。
「こんなものを!?」
「どうせ、どこかからぬすんできたものなのでしょう?!」
取りまきの女の子のひとりが、銀髪(ぎんぱつ)の少女の手からカゴをたたき落した。
「……あ」
石だたみの上に、色とりどりの花が飛び散る。
「さあ、こんな子は放っておいて行きましょう、ベル様」
と、少女にせを向け、立ち去ろうとするみんな。
「…………」
銀髪の少女はだまったまま、その場にひざをついて花をカゴにもどす。
「あの……」
ベルはひとりだけその場に残って、銀髪の少女に声をかけた。
「…………」
女の子は、顔をふせたまま、花を拾い続ける。
「ベル様、さわると手がよごれますよ」
遠くから、みんなの声。
「……今、行きますわ」
この子を見ているだけでつらくなる。
ベルは少しためらってから、みんなの方に早足で向かった。