今月のお噺は
道楽者の若旦那が、勘当の末 紙屑屋に奉公する。集めた紙屑やボロを選り分ける仕事。白い紙と字が書いてある紙は別々に。 蜜柑の皮は染料用、糸屑、綿屑も別々にと結構大変な作業だがそこは若旦那、真面目にやるはずもない。手紙の切れ端を見つけては、書かれている文言を手がかりに、独り勝手な妄想の世界へ没入していく。
なになに、「ご面倒ながら一筆しめしもうらせ候・・・。昨夜はお越しかと。」何?色っぽい手紙だな。「夜半頃までお待ち候えども、お越しなき故、かくはしめし参らせ候。旦那様へ」だと? この旦那、五十過ぎで脂ぎってるな。結城の着物に紺色の足袋。下駄は桐柾のスーッと通ったやつ。女は二十五、六で家は浮世小路。八反の襟付きの着物に昼夜帯。「おい居ないのか?」旦那が上がると女はそこにいる。
と空想に遊び、仕事は一向に進まない。そのうち義太夫の切れ端を見つけ出して、芝居がかりでドッタンバッタン! 「いい加減にしろ!お前もよっぽど人間の屑だな!」「はい。で、先ほどから選り分けてます」