第六回
「で?」
『三本足のアライグマ』亭の中を見わたしたベルは、アンリに問いただした。
「あたしたちをこんなオンボロな店に集めて、何のつもり?」
「……オンボロで悪かったね」
カウンターの向こうで、女主人のセルマがこちらをにらむ。
「君たち、『星見の塔(ほしみのとう)』で勉強してみる気はないかい?」
アンリは苦笑しながら三人にたずねる。
「『星見の塔』?」
と、ショーン。
「魔法を教える学校だよ」
アンリは説明した。
「アムレディア王女の発案で、身よりのない子供たちが中心になって勉強している。通学生もいるけれど、ほとんど生徒は塔内の寮(りょう)でいっしょにくらしているんだ」
「あのね。アーエスならともかく、何であたしたちまで?」
バラのお茶にたっぷりはちみつを注ぎながら、ベルはくちびるをとがらせる。
「実はね、ベル」
アンリは言った。
「君のお父さんとは、前からの知り合いなんだ。おじょうさんを転校させたいと相談を受けていたんだよ」
「と、父さんが?」
口に運びかけていたカップの手を止めるベル。
「ショーン、君のお父さんである騎士団長からもだ」
アンリはショーンのほうをふり返る。
「父上が……?」
ショーンは思いだした。
「……ああ、そういえば、そんな話、聞いたような気が」
「まあ、こうして二人がいっしょにいるところに出くわすとは、ぼくも思っていなかったけれどね」
「……『星見の塔』に……入れば……だれにも……めいわく……かけずに……すむ?」
アーエスが小声でアンリにたしかめる。
「そうだね。少なくとも食事や身の回りことでこまることはないよ」
「あたしはいやよ。そんなわけの分かんない学校に入ったら、きっと魔法の実験台にされるもの」
ベルはみけんにしわをよせた。
「わ、わけの分からない学校かあ」
うで組みをして考えこむアンリ。
「……だったら、一度、見学に来ないか? どうするかは、それから決めればいい」
「見学? ……ねえ、どうする?」
ショーンに意見を求めるベル。
「悪くはないていあんだ。その学校が、ぼくらが学ぶにふさわしい学校であるかどうか、見極めようじゃないか!?」
ショーンは立ちあがり、イスにかた足を乗せてポーズを取った。
「そう! このサクノス家の人間たるぼくの、するどい眼力(がんりき)で!」
「……もうめんどうくさいから好きにして」
こうして。
ベル、ショーン、アーエスの三人は、魔法学校『星見の塔』を見学することになったのだった。
…みごとアーエスを救い出し、「星見の塔」を見学することになった三人。
次回は、いよいよ最終回…ベルは「あの人」と会えるのか…!?
(次回は8月末更新予定)