第三回
そうぜんとなる試験会場。
受験者のほとんどは、こおりついたようにその場から一歩も動けない。
おさない受験者の中には、泣きだしそうになる者もいる。
しかし、その中で。
「……お前たち、下がれ」
ショーンは、自分の試合相手だった男の子に命じた。
「え?」
おびえきった男の子は、不思議そうにショーンを見上げる。
「足手まといにならないように、エティエンヌや副騎士団長からはなれ、まとまっているのだ。女の子や、小さな子たちにもそう言え。分かったな?」
「は、はい!」
男の子はうなずくと、走ってショーンからはなれる。
「……」
ショーンはこしの短剣をぬくと、留め具のかわひもを切って板金よろいぬぎすて、身軽になった。
「これなら、戦える!」
剣をかまえ、黒い騎士たちの前に出るショーン。
「ほう、まずきさまがわれらのえじきとなるか?」
黒騎士たちは、そんなショーンを見てあざ笑う。
「これでも笑っていられるか!」
ショーンは剣をふり上げ、切りかかる。
だが。
キーン!
黒騎士のよろいは、ショーンの一げきをかんたんにはね返した。
「……あれ?」
「こら~っ!」
応援席のベルがどなる。
「それって、けがをしないように刃を落としてある試合用の剣でしょうが! 短剣を使いなさいよ、短剣を!」
「そ、そうだった!」
ショーンは急いで短剣に持ちかえたが、もうおそい。
「……終わりだ」
黒騎士は手にしていたたてを、ショーンの頭に食らわした。
ゴンッ!
と、にぶい音。
「ぐへっ!」
ショーンはのけぞって引っくり返ると、そのまま目を回す。
「おお……見せ場が……全然ないままに……退場……感動的なほどの……弱さ」
失礼な感想を口にするアーエス。
一方。
「こら~っ! うちの雑用係に何すんのよ!」
ベルは思わず応援席から飛びだすと、ショーンのそばにかけより、落ちていた剣を拾い上げた。