第三回
「今回の入団試験は思いがけない事件のため、とちゅうで終了ということになってしまいました。残念ですが、そのため、今回の合格者はなし、ということにさせていただきます」
黒騎士たちが引っ立てられていき、会場がようやく落ち着いたころ。
シャーミアン副騎士団長は、入団試験が中止になったことを受験者たちに告げた。
受験者たちはみんな、仕方ないといった顔。
しかし、その中でひとり。
「なっとくいか~ん!」
さっきまで気絶していたショーンだけが前に出て、こうぎした。
「待て待て待て~っ! おかしいではないか!? エティエンヌ兄上でさえ受かる試験に、どうしてこのゆうしゅうなぼくが落ちるのだ! ここまでのとちゅうけいかを見ただけでも、このぼくに騎士団員のしかくがあることは、分かるだろうが!」
「あのさ~、エティエンヌ兄上でさえ、とか言うなよ~」
頭をふるエティエンヌ。
「ショーン・サクノス・ド・レイバーンの名において! 事件で中断したのなら、やり直しを要求する!」
「こ、こまったわね」
身を乗りだすショーンを見て、副騎士団長は苦笑する。
と、その時。
「はいはい。ジタバタしないの、見苦しい」
ベルが出てきて、ショーンの右手をガッチリとつかんだ。
「わっ! ちょっと待て!」
「試験……終わり……帰るよ」
アーエスも、ショーンの左うでをつかむ。
「だから待てというに! このままでは父上たちに合わせる顔が……!」
「んなもん、最初からないでしょ」
「しょせん……ショーンは……わたしたちの……雑用係……」
「だれが雑用係だ! 放せ~っ! もどせ~っ!」
それでもねばろうとするショーンをズルズルと引きずって、ベルとアーエスは試験会場を後にした。