第三回
「今年も終わりましたね。結果はちょっと残念でしたが」
受験者たちのすがたが消えた後で。
会場に残った副騎士団長は、エティエンヌに向かってほほえんでいた。
「あなたが考えた今回の試験、少しばかりむずかしすぎたようですね」
「う~ん。ぼくとしては、とつぜんの事件に対し、騎士として正しくふるまえるか、というところが見たかったんですけどねえ」
どうやら、黒騎士たちの乱入は、試験の一部。
それも、エティエンヌの提案によるものだったようだ。
「ま、ちょっとかわいそうだったのは、悪の騎士をえんじた、うちの新人団員たちですよねえ。受験者でもない、乱入してきた女の子二人にひどい目にあわされるなんて、思ってもいなかったんじゃないかなあ?」
エティエンヌはふき出しそうになるのをこらえる。
「笑い事じゃありません。でも、なかなかいないものね、すぐれた騎士になれそうな子って」
ため息をつくシャーミアン副騎士団長。
「最近の貴族の子どもは、あまやかされて育ってますからねえ~」
「あら、あなたも貴族の子どもでしょう? コネで入団したダメ騎士をよそおいながら、実は騎士団でもっともきけんな任務をまかされる影(かげ)の騎士、エティエンヌ殿(どの)」
「あははは」
エティエンヌは照れくさいのか、頭をかく。
どうやら、このエティエンヌ、ショーンが思っているほどダメな騎士ではないようだ。
「でも、あなたの弟さんは少しばかり見どころがあったわ。小さな子どもたちを真っ先ににがしたところ。重いよろいで身動きが取れないと思ったら、とっさにぬぎすてて戦おうとしたところ」
「だけど、弱すぎですよねえ、ショーンは」
「そうね。かれに関しては、もう一年ばかり、成長を見ましょう」
シャーミアン副騎士団長はうなずいた。
「わたくしとしては、弟さんのお友だちの二人、すぐにでも入団してほしいのだけど?」
「まあ、無理でしょうね。あの『星見の塔』の生徒ですから。
「いい生徒を育てているようね、あの学校は」
シャーミアン副騎士団長は目を細めると、ふだんの任務にもどるため、騎士団本部の建物へともどっていった。