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その翌日。
「ピ、ピリピリする! 日焼けの薬をー!」
診療所に駆け込んできたショーンは涙目でトリシアに訴えた。
「待ってて……しばらく」
と、答えるトリシアの声にも元気はない。
昨日、海に行った一同の中で、今、診療所に日焼けの治療に来ていないのは、人形のミラと、最初から日差しに気を使っていたアンリ、それとアンリの注意を守ったレンの三人だけ。
「……最低」
アムレディアまでもが、薬をもらう順番を待っているのだ。
「そうだよねえ。海ってこれがあったんだ」
背中に薬を塗ってもらいながらうめくのは、こんがりいい具合に焼けたセルマ。
「こ、これしきのことで……ヒイッ!」
日焼けの上から鎧を着ようとして、悲鳴を上げたのはシャーミアンだ。
「こ、こんなこと、部下にバレたら?」
「しばらく街に出られんな」
「痛いよー、でも、ショーンと一緒!」
どんな敵にも屈しないサクノス家の三兄弟でさえ、弱音を吐いている。
「い、今の僕はロースト貴族だよ、トリシア嬢ー」
待合室の長イスに横になったセドリックは、手足をピクピクさせながらも白い歯を見せる。
「うう、このままだと、自分に塗る薬がなくなるー!」
ずらりと並ぶ日焼けの患者を見て、トリシアは悲鳴を上げた。
結局。
「ざっまー見ろです!」
そんな一同を見て、高笑いしたのは雪の乙女のシュネーだった。
…いかがでしたか?
お部屋に海を作っちゃうなんて、さすがアンリ先生ですね!
次も、お楽しみに!