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「トリシア、けが人がこれからどんどん運ばれてくる! 助け出す作業は我々に任せて、手当にあたってくれ!」
シャーミアンはトリシアに頼みました。
「うん!」
トリシアは騎士たちの手を借りて、近くの空き地にけが人を集めます。
そこに、ベルやショーンたちも姿を見せました。
「来てくれたんだ!?」
と、トリシア。
「治癒魔法が使える人間は、ひとりでも多い方がいいからな」
ショーンがうなずきます。
「アンリ先生もこっちに向かってるぞ。僕は兄上たちを手伝うことにする」
「僕もそっちだな」
レンもショーンといっしょに街壁に向かいました。
「ねえ、手伝えることは?」
トリシアに聞くベル。
「軽いけがの人たちは任せる!」
治癒魔法をかけながら、顔も上げずにトリシアは短く返します。
「ほら、アーエス! あんたも!」
「……合点……承知……」
ベルはアーエスと二人で手当に取りかかりました。
「あのー、僕は?」
自分を指さすセドリック。
「ごめん! 今、思いつかない!」
トリシアは、目の前のけが人の手当に必死です。
「あはは、僕は魔法が使えないからね」
いつものように笑いながら頭をかくセドリックですが。
「……悔しいよ」
小さい声でそうつけ足したのを、誰も耳にしてはいませんでした。