5
「これも計画外?」
おしゃべりフクロウは、心の中で誓っていた。
この屋敷には、もう二度と入らないと。
おしゃべりフクロウが今がいるのは、落とし穴の下の落とし穴の下の落とし穴。
「うん」
もちろん、セドリックもいっしょだ。
「何も触るな。いいわね?」
「うん」
うなずいて立ち上がるセドリック。
だが、
今度の落とし穴の正面には、横に伸びる穴が開いていた。
「ここから外に出られるかも」
おしゃべりフクロウは歩き出す。
「どうかなあ?」
と、首をひねったのはセドリック。
「確か設計では……」
そう言いかけた時。
グワオオオオオオオッ!
横穴の奥で、何かが吠える声がした。
「あ、あ、あ、あ、あの声って」
おしゃべりフクロウはつばを飲み込む。
「子犬かな?」
「ううん」
「子猫?」
「ううん」
「子ネズミとか?」
「ううん」
「妖精とか、蝶々?」
「蝶は泣かないと思う」
おしゃべりフクロウは可愛らしい生き物を次々と挙げたが、セドリックはそれを片っ端から否定する。
「あれはトリシア嬢に頼んで、ここの見張りに雇ったドラゴンだよ」
セドリックは正解を教えた。
「ぎゃあああああああ! その答え、知りたくなかった! なんとなくそんな気してたけど、知りたくなかったあああああ!」
おしゃべりフクロウはあたりを走り回る。
「ここに落ちたものをみんな食べてくれるように、頼んである」
さらに追い打ちをかけるセドリック。
「ここに落ちたもの、みんな?」
おしゃべりフクロウは足を止めて聞き返す。
「うん。みんな」
答えてからセドリックはポンッと手を打った。
「ああ。もしかして、僕もかな?」
「逃げるわよ!」
おしゃべりフクロウはセドリックの手を引っ張って壁を登り始める。
人間、必死になると何でもできるもので、セドリックでさえちょっとずつだが登っていく。
だが、巨大なドラゴンが横穴から顔を出し、こちらに近づいてきた。
「この馬鹿から食べて!」
セドリックを蹴ろうとするおしゃべりフクロウ。
「いえいえ、お先に!」
その足を引っ張るセドリック。
もみ合う二人の手が壁から離れた。
セドリックとおしゃべりフクロウは、ドラゴンの鼻先に向かって落ちてゆく。