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と、次の瞬間。
誰かが二人の手をつかんだ。
「何してるのよ?」
「怪我するぞ」
おしゃべりフクロウの手をつかんだのは、トリシア。
セドリックをつかんだのはレンだ。
二人は隠し扉を開け、そこから手を伸ばしたのだ。
「ちょっと、支えになってくれない?」
トリシアが声をかけると、ドラゴンは鼻でセドリックたちを押し上げた。
「た、食べられるかと思ったー」
穴から抜け出し、ほっと息をつくおしゃべりフクロウ。
「人間なんて食べる訳ないでしょ」
トリシアは眉をひそめる。
「この子、果物しか食べない種類のドラゴンなの」
「こいつが! こいつが、なんでも食べるって!」
おしゃべりフクロウは思いっきり、セドリックの頭を引っぱたいた。
「果物ならね」
と、トリシア。
「あんたたち、どうしてここに?」
ようやくセドリックをたたくのを止めたおしゃべりフクロウが尋ねる。
「ポムがこの子と仲良くて」
トリシアはドラゴンを指さした。
「たまたま遊びに来てたのよ。で、あなたたちが落ちてきたって知らせてくれたの」
ドラゴンがうなずく。
「そろそろ、騎士団が来るよ。逃げなくていいのかい?」
レンがおしゃべりフクロウに声をかける。
「どうして教えてくれんの? 捕まえないの?」
驚くおしゃべりフクロウ。
「もう十分、ひどい目にあっただろ?」
レンは目くばせした。
いつもセドリックのせいで迷惑しているのは、レンも同じなのだ。
「この穴をまっすぐ行くと下水道に出られるよ」
トリシアが隠し扉から奥へと続く道を指さす。
「下、下水道……」
多少汚いが、逃げられるなら気にしていられない。
「じゃ、あたしはこれで!」
走って去ってゆくおしゃべりフクロウ。
「またね、夏バテウミガメ!」
トリシアは声をかけた。
バシャ!
誰かが下水道でずっこける音。
「……トリシア」
レンは眉をひそめて、トリシアに聞いた。
「おしゃべりフクロウ、僕らと一緒に梯子を上って、上から逃げてもよかったんじゃ?」
「そっか、それは気が付かなかったよ」
と、澄ました顔のトリシア。
「僕もだ! 気が合うねえ!」
セドリックも笑った。
ところが。
「まあ、いいさ」
レンはセドリックの腕をガッチリとつかむ。
「ドラゴンを勝手に地下で飼ってたってことで、騎士団がカンカンだぞ」
「へ?」
セドリックの顔がさっと青ざめた。
「シャーミアンが待ってる」
「ちょ、ちょっと待て、わが親友! 僕も下水道から逃げたいなあと……」
「ダメだ」
こうして。
セドリックは引きずられていき、たっぷりと怖いお姉さんから説教を食らったのだった。
おしまい
いかがでしたか?
…セドリック、おしゃべりフクロウとは意外といいコンビかも!
でもトリシアには全然アピールできなかったみたいだね…?