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「あっちあっち! 沈没船の方!」
アーリンは、ショーンたちを案内して川の中を進んでいた。
中州よりも少し下流の、深い場所までやってくると、澄んだ水を通して、三本マストの古い沈没船が見えてくる。
「ゆ、幽霊船じゃないだろうな?」
「船は木で出来ているのに、どうして沈むのか不思議だねえ」
ショーンとセドリックが尻込みしている間に、レンが船体の横にあいた穴を見つけ、一歩先に沈没船の中に進んでいく。
「……いつものレン殿らしくないな」
レンの後ろ姿を見ながらショーンは顔をしかめる。
「どこがだい、四男の人?」
と、セドリック。
「だいたいいつも、僕か貴様がヘマをしようとして、レン殿が止めるだろう? それが今回は逆ではないか?」
「そうかい? 僕はヘマをしたことなど一度もないが?」
セドリックは肩をすくめた。
「ほら、あんたたちも入って!」
そんな二人の背中をアーリンがドンッと押す。
沈没船の中は水面からの光が届かないので暗く、自分の鼻先さえよく見えない。レンたちは猫目の魔法でくらいところでも目がきくようにして中を調べる。
そして、船室をひとつひとつ見て回り、船底についたところで。
「これはなんだろうねえ」
セドリックが指さして首を傾げた。
近づいてみると、それは「三本足のアライグマ」亭の丸テーブルよりもふたまわりほど大きな半球だ。
その中心には、何か黒いものが見える。
「触らない方が良さそうだぞ」
ショーンがセドリックに注意した。
しかし。
「……え?」
もう手遅れ。
セドリックはもうその半球を力いっぱい叩いていた。
すると。
「!」
半球の中心にあった黒いものが動き、レンたちの方向に向く。
「逃げろ!」
レンが叫んだ。一同は急いで船から飛び出ると川面を目指す。
「大きな魚って聞いたけど、あれは目玉だ!、お化けエイ(タッド・ゴーモン)の!」
水をかきながらレンが説明した。
お化けエイは、沈没船の中にいるのではなかった。沈没船が、お化けエイの背中に乗っていたのだ。