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「お化けエイ!? 大きすぎるだろ!」
ショーンは恐怖で、沈没船の方を振り返ることさえ出来ない。
「これ、ムニエルにしたら、大宴会が出来るよ!」
さすがのセドリックも顔がこわばっている。
「イルカやクジラがたまに浅瀬に入ってきて帰れなくなるって話ならアンリ先生から聞いたことがあるけど、お化けエイがこんなに川をさかのぼってくるなんて!」
レンは自分の目にしたものがまだ信じられなかったが、小さな島ほどもあるお化けエイは沈没船を背中に乗せたまま、ゆっくりと浮き上がってきている。
「どうして海に帰らないのだ!」
呪文が効いているはずなのに、焦ったショーンは水を飲み込んでおぼれそうになる。
「しっぽに沈没船の錨が絡まってるよ。それで動けないんじゃないかなあ?」
セドリックがのん気に言った。
「こいつの大きさからしたら、錨なんて大した重さじゃないだろう?」
ショーンが信じられないというように首を振った。
「妖精や魔法生物の仲間には鉄が苦手な種族が多い! きっとお化けエイもそうだ!」
と、気がつくレン。
錨は鉄製。それでお化けエイが弱っていたのだとしてもおかしくはない。
「じゃあ、後は任せるから、よろしく~!」
水面に顔を出すとアーリンは飛び魚やマグロよりも早く上流の方へ泳いで逃げていく。
三人が桟橋に上がると同時に、お化けエイも水面に姿を現した。小さな船が、お化けエイの起こした激しい波のせいで岸にぶつかる。
もちろん、港にいた人たちは驚いて逃げ回った。
「騎士団を呼ぶべきではないか?」
ショーンがレンとセドリックの顔を見る。
「大丈夫。この様子じゃ、騎士団がすぐにやってくるよ」
セドリックは肩をすくめた。
「僕らが呼びにいかなくっても、ね」