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騎士見習いになって間もないある日。
レンは白天馬騎士団本部の中庭で、サクノス家の三兄弟と武術の練習のはげんでいた。
今、相手をしているのはエティエンヌ。
レンは騎士団の基本の装備である剣を握り、細い木の枝を手にしたエティエンヌに攻撃をしかけている。
「踏み込みすぎだよ。体重を前の足にかけすぎると……」
レンが振る剣を、わずかな体の傾きだけでかわしながら、エティエンヌはヒュンと枝を払った。
「!」
枝はレンの足首に命中。
レンはつんのめって、顔から地面に倒れ込む。
「こうなっちゃうわけ」
エティエンヌは枝を捨てて、レンに手を差し出した。
「……勝てる気がしない」
レンは立ち上がり、額についた土を手のひらでふく。
「お前な、しっかりしろよな! 弱っちいとこ見せんじゃねえっての!」
練習の様子を見ていた相棒のダッシュが、レンにヤジを飛ばす。
「うっさいな! だったら自分でやってみろよ!」
レンはダッシュに言い返した。
「おう! 人間なんてな、このダッシュ様にかかれば一瞬で……」
ダッシュは自信満々でプリアモンドの前に立つ。
しかし。
「一瞬でどうなるんだ?」
プリアモンドはダッシュの襟をつかみ、軽く投げ飛ばした。
「わ〜っ!」
ダッシュがゴロゴロ転がって、芝生の上で目を回す。