「それで、何を作るの?」
生徒のひとりがたずねた。
「適当にページを見てみよう。」
ショーンはかわの表紙を開いた。
最初にみんなの目に飛びこんできたのは……。
「ドラゴンでも一滴でコロリの毒薬?」
ショーンは解説を読みあげた。
「ええと、無味無臭。他の飲み物にまぜても絶対にバレない……。」
「人に……言えない……うらみを……持つ人が……飛びつきそう。」
いつになくひとみをかがやかせるアーエス。
「却下。」
ベルがそくざに言いはなった。
「………………どうして?」
「あのだね、アーエス。そんなあぶないもの、診療所で売るわけにいかないだろう?」
ショーンが首を横にふる。
「絶対……売れる……のに……。」
アーエスは残念そうだ。
「売りだしたら、まず飲まされるのはベルだな。」
と、ショーン。
ムギュ?ウ!
ベルは思いっきり、ショーンの腕をつねった。
「じょ、冗談だろうが!」
「あんたが言うと、冗談に聞こえないのよ!」
「ほ、他のところを見てみよう!」
ショーンはページをめくり、別の薬をさがす。
すると。
「……やせ薬。飲みつづければ、三か月で理想のスタイルに。」
「なるほどねえ、これなら売れそうじゃない? ま、あたしには必要ないけど。」
意外と乗り気な様子のベル。
「これがいいよ!」
「うん、これ!」
他の女の子たちも同意する。
「そうそう、わたしたちは要らないけれど、ほら、街にはやせたい女の子たくさんいるし!」
「う、う?ん……。」
びみょうな問題だけに、意見を表明することをためらうショーン。
何だか、首をたてにふっても、横にふっても、女の子たちにはおこられそうだ。
「ベルには必要。わたしは要らない。」
アーエスは断言した。
「あんたはたしかに要らないでしょ! スタイル気にする必要のないお子様だもん!」
ベルのまゆがつり上がる。
「……失礼……な。」
「どっちが失礼よ!」
みんなの間で、だれに薬が必要なのか、ワイワイと言いあらそいが始まった。
「……いろいろもめそうだから、これはやめよう。」
頭痛を覚えたショーンは、別のページを開く。
「空を飛べる薬……これ、よさそうじゃないか?」
「二つ……問題が。」
薬の効果のところに目を通しながら、アーエスが言った。
「ひとつ……一度飛びはじめたら……効果が切れるまで……地上に……おりられない。二つ……薬が切れたら、地面にドスン。」
「……却下。」
ショーンはさらにページをめくる。
だが、なかなか実際に使える薬は少なく、みんなの意見が一致しない。
そして、『魔法秘薬学』も、真ん中近くまで調べおわったころになって。
「……これよ! これにするわよ! これなら、だれにもめいわくかかんないし!」
ベルがあるページを指差して声を上げた。