しばらくして。
一同は『三本足のアライグマ』亭に場所をうつしていた。
「ご、ごめん。」
事情を聞いたトリシアはベルとショーンを見て、すまなそうな顔になる。
「心配、かけてたんだね。」
「し、心配なんかしてないわよ! ただ、ショーンがうるさいから。」
ベルはプイッと横を向いてしまう。
「別にぼくだって心配したわけではないぞ。診療所がつぶれたら、こまる人がいるのでは、と思っただけだ。」
ショーンも首をブルブルと横にふる。
「……あんたさ、いい後輩持ったじゃない?」
トリシアに向かってウインクするセルマ。
「けど、目的は正しくても、やり方がなあ。」
レンは三人組を見わたして、腕組みをした。
「まあ、ほれ薬なんて、解呪(かいじゅ)を使わなくても、半日もすれば効き目は切れるんだけどね。」
「そ、そうだったのか?」
ショーンは感心する。
「さすがはレンどの。ほれ薬のことまでくわしいとは。」
「昔、ぼくも作ったことあったんだよ。結局、アンリ先生に取りあげられたけど。」
レンは笑ったが、トリシアとベルの顔つきがとたんにきびしくなる。
「だれに飲ませようとしたのよ!?」
「そうですよ! だれにですか!?」
レンにつめよる、トリシアとベル。
「……だれにだか、簡単に分かるだろうに。」
「聞くまでも……ない……気が……。」
ショーンとアーエスは、ため息をついて顔を見合わせた。
「ええと、あの……。」
レンは助けを求めるようにアンリを見る。
「……で。」
と、そのアンリをふり返るアムレディア。
「あなたは、レンから取りあげたほれ薬、どうしたのかしら?」
ニコニコしてはいるが、目が笑っていない。
「あれは……どうしちゃったかな?」
アンリの表情が強張る。
「……たしか、すてた、とは思うんだけど。」
「アンリ先生、まさか?」
ソリスもこしに手を当てて、アンリをにらんだ。
「……ここはにげよう。」
レンにささやくアンリ。
「りょうかい!」
二人は『三本足のアライグマ』亭を飛びだした。
「あ?、待ちなさい!」
「ちゃんと説明してください、先生!」
追いかけるトリシアたち。
「……平和だねえ。」
カウンターの向こうでカップをみがいていたセルマは、まどの外の青空を見上げてつぶやいた。
終わり☆