第二回
「?」
急にヒソヒソ話になったので、ベルは立ちどまり、耳をそばだてた。
「お金のある家の子だから仲良くしなさい、とわたくしの両親は口うるさいのですが。」
「正直な話、ついてゆけませんわ。」
「高い首かざりや髪(かみ)かざりを見せびらかして、あれできれいになったつもりなのですから。」
「しょせんはアザラシの子ですのにねえ。」
「名門校であるアリエノール学園に入れたのは、やっぱりお金の力なんでしょう?」
「でなければ、アザラシごときが入れるわけありませんわ。」
「おまけにせいかくの悪いこと!」
「おべっかを使っていればきげんがいいのですから、その点ではあつかいやすいですけど。」
「まあ!」
女の子たちは、クスクスと笑う。
「!」
よろけるように後ずさるベル。
(みんな……そんなことを考えながら……口先だけで……仲良くしてたの?)
かかとが何かに当たって、かわいた音を立てた。
「だれ?」
音に気がついた取りまきたちのひとりが、こちらをふり向く。
「……!」
ベルは顔を両手でおおうと、みんなに背(せ)を向けて学校を飛びだしていた。