WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第二回

ベルは真っ直ぐには帰らず、街を歩いていた。
 さっきから同じところをグルグル回っているようだ。
 金のアクセサリーを売る店の前を、もう四度も通っている。
(金やほうせきでかざったって、あたしはどうせアザラシの子、か……。)
 ベルは足を止め、ぼんやりとあたりを見わたす。
 幸せそうな人たちが行きかう、にぎやかな街なみ。
 だが、それも今のベルのひとみには、セピア色にあせてうつる。
(……あ。)
 昨日、花を売っていた銀色の髪(かみ)の少女がまた、同じ場所に立っていた。
「きれいなお花……五輪で……銅貨(どうか)一まい……。」
 どうやら昨日と同様、あまり売れてはいないようだ。
 あんまり小さな声なので、花を売っているとはだれも気がつかないのだろう。
「ねえ。」
 赤くじゅうけつした目をこすったベルは、少女のところに行って声をかける。
「……昨日の?」
と、少女。
「覚えていました? まあ、当然ですわね。」
 ベルはふんと鼻を鳴らし、髪をかき上げた。
「……。」
 少女はベルのわきをすりぬけて、別の場所にいどうしようとする。
「ちょっと! むししないで!」
と、少女の細いうでをつかんで、ハッとするベル。
(そうだった……この子……。)
「……その花、買ってあげま……あげるわよ。」
 ベルは、アリエノール学園式の、ていねいな言葉づかいをやめた。
 もともと、こんなしゃべり方は好きではないのだ。
「いくらだったっけ?」
「五本で……銅貨……。」
 銅貨一まい、と言いかけたところで、銀髪(ぎんぱつ)の少女は何かを思いだしたかのように頭を横にふった。
「……やっぱり……今日は……ただでいい。」
「……ふうん。」
 ベルは出しかけた硬貨(こうか)を引っこめて、花を受けとる。
「ま、いいわ。……お母様にあげよっと。」