第二回
少女が歩きだすと、ベルはそのまま、かたをならべるようにしてついてゆく。
とにかく、だれかといっしょにいたかった。
でないと、むねがおしつぶされそうなのだ。
だが、おべっか使いの取りまきたちとは、もう会う気にはなれない。
かといって、家に帰って、母親の笑顔を見るのも今はつらい。
「あんたの家、近いの?」
小がらな銀髪の少女の歩調に合わせながら、ベルはたずねた。
少女は首を横にふった。
それもそうだ。
ここは東街区(がいく)の市民広場。
南街区は、大レーヌ川にかかる橋をわたった向こうである。
「学校は?」
またも首は横にふられる。
「……あんまし、おしゃべりじゃないんだ?」
「しゃべりたい相手だったら……しゃべる。」
少女はベルのほうに顔も向けずに言った。
「あなたはちがう。」
「ふん。」
ベルは黒髪をかき上げる。
「あたしに向かって、そんな生意気な口きく子って、初めてよ。たいていみんなは、かげで悪口言うから。」
「…………。」
少女はどういう意味、とたずねるようにベルを見上げた。
「あたしの家、お金持ちなのよ。だから、親に言われてあたしに近よってくる子はたくさんいるの。ほんとはあたしのこと、ばかにしてるくせに。」
「ばか……なの?」