第二回
「ええっとー、怪しい馬車がー、西の荒地にある、つぶれた農場に入っていきましたー」
「確かか!?」
「う、…………だいたい」
「仕方ない、信じるか」
リュシアンはとにかく、フィリイが指し示す方向を目指した。
フィリイの報告は、そうデタラメでもなかった。
誰もいるはずのない古い農場の小屋の前に馬車が止まり、窓に明かりがともっていたのだ。小屋に近づくと、中から声が聞こえてくる。
「……お前は騎士団本部に知らせに行け。プリアモンドたちを呼ぶんだ」
リュシアンは剣を抜くと、フィリイに指示した。
「ひとりで助けに飛び込んだりしませんよねー?」
フィリイは疑いの目でリュシアンを見る。
「しない。さっさと行け!」
「約束ですよー」
「分かった、約束する!」
リュシアンは急げと言うように、手で追い払うしぐさをした。
「だったら、了解でーす」
フィリイが馬に乗り、王都に向かうのを確認すると、リュシアンは約束などそっちのけで小屋に踏み込んだ。
バンッ!
「リュシアン!?」
アナベスは椅子に縛りつけられ、男たちに囲まれていた。
扉を破ったリュシアンは、近くにいた男のあごに剣のつかを食らわせる。
「てめえ、なにもんだ!」
犯人たちはリュシアンを振り返る。
「見て分からないか? その娘を帰してもらおう」
リュシアンは観察した。
犯人たちは全部で十一人。
アナベスから引き離すことさえできれば、倒せない数ではない。
「俺たちの狙いは、こいつの婚約者の父親の金だ!」
アナベスの右脇に立つ男が、ナイフをアナベスに向けながらリュシアンをにらむ。
「知らねえだろ! あいつがどんなに悪どいことをやって金を貯め込んだか!」
「そうだ! あいつがいなきゃ! 俺たちも店や財産、家族を失うことはなかった! やつのせいだ!」
犯人たちは剣を構えながらどなる。
「そういうお前たちも善人には見えないがな。怪我をしないうちに、その娘を放せ」
リュシアンはじりっと一歩、アナベスの方に踏み出した。
「近寄るな! 剣を捨てるか、この女が死ぬかだ!」
アナベスの白い喉にナイフが強く当てられる。
「…………」
リュシアンは剣を捨てた。
「そいつを始末しろ」
アナベスにナイフを突きつけていた男が、仲間に命じる。
と、その時。