「この岩の向こうに閉じ込められているの?」
トリシアは、地下道をふさいでいる大きな岩を発見した。
「この岩を崩せば……」
と、プリアモンドがハンマーを振り上げたその時。
「やめてくれ!」
鉱山妖精たちはあわててプリアモンドの腕をつかんだ。
「その大岩が、かろうじて地下道の屋根を支えている! 大岩が少しでも動くと、こっちの地下道は崩れるんだ!」
地下の世界にくわしい鉱山妖精の言葉。
間違いはないだろう。
「向こうに何人いるの?」
トリシアは診療カバンを開く。
「あと、怪我人は?」
「閉じ込められているのは十一人。すぐにでも手当てが必要な奴が五人ほどいる」
鉱山妖精は答えた。
「どうしよう? わたしたちが向こうに行くか、怪我人をこっちまで連れてこないと……」
これだけ離れていては、治癒魔法も使えない。
トリシアは唇を噛む。
すると。
「岩が動かせないなら、別の道を作るだけだ!」
プリアモンドがハンマーを握ると、大岩のすぐ横に立って壁に手を触れた。
「……このあたりなら、掘り進めそうだ」
「待て! わしらもそれは考えたが、道を掘るには正確な計算が!」
鉱山妖精は止めようとする。
「その時間はない!」
プリアモンドはハンマーを振り下ろし、大岩の横を掘り始めた。
土や石が飛び散り、壁に大きな穴が開く。
「!」
息を呑んだ鉱山妖精たちは後ずさった。
「崩れてきたら、魔法でなんとかするから!」
トリシアも近くにあったツルハシを手にとって、プリアモンドを手伝う。
さすがにそう簡単には掘り進めはしない。
四、五回ハンマーを振って、ようやく腕の長さほどの深さの穴が開いただけだ。
「光と熱よ! 集まりて、その力を貸せ! ブレイズ!」
トリシアはプリアモンドのハンマーに炎の魔法をかけた。
熱を帯びて白くなったハンマーがどんどん岩壁を砕き、プリアモンドが進む足取りも速くなった。
だが、そのぶん衝撃が大きくなり、大岩も崩れそうになる。