「くっ! あの騎士はそろそろ向こうに着いたか!?」
額に汗をにじませた妖精が怒鳴った。
「知るか!」
別の妖精が怒鳴り返す。
プリアモンドが掘り進んだ道の奥は、真っ黒な土煙のために全然、先を見ることができない。
何がこの向こうで起きているのか、まったく分からないのだ。
「あ、あとどのくらい、こうしてればいいのかな!?」
トリシアの魔力も限界に近づいていた。
岩の重みで障壁を支える両腕が震える。
無事にここから脱出できたら、自分で自分の腕に治癒魔法を使う必要がありそうだ。
「もう少しだ! あのボケ兄、今頃は鉱山妖精の四、五人まとめて抱えて、こっちに向かってるはずだ!」
リュシアンが歯を食いしばった。
「どうして分かるの!? プリアモンド、向こうで倒れてるかも!」
時々、岩が崩れる音が聞こえてくる。
プリアモンドが下じきになっていて、みんなの助けを求めている可能性もある。
だが。
「分かるさ! 兄弟だからな! あんなボーッとした鈍感なやつでも、兄は兄ってことだ!」
リュシアンは頭を振り、ふっと笑顔になった。
「そうそう! 女の子に告白されて、半月も経ってからそのことに気がつくくらい鈍いけど、一応兄さんなんだよねー!」
汚れた顔で、エティエンヌも笑う。
「……あはは! プリアモンドならありそう!」
と、トリシアが顔を真っ赤にしながら笑い返したその時。
「……えらい言われようだな」
土煙の向こうから声。
「ごほっ! ごほっ!」
プリアモンドがせき込みながら、フラフラした足取りで姿を現した。
リュシアンの想像したとおり、重傷の五人の鉱山妖精をいっぺんに抱えて。
もちろん、残りの妖精たちもいっしょだ。