「トリシア! 下がって防御魔法を!」
手を休めずにプリアモンドは叫んだ。
「でも、あなたは!?」
「このまま一気に進む!」
「分かった! 見えない壁よ、岩を支えて! マギニート・ガドール!」
トリシアはプリアモンドのそばから離れると、魔旋律を唱えて見えない障壁を張り、岩を支える。
だが、魔法の力を借りても、大岩は重過ぎた。
プリアモンドが掘った脱出路をふさごうと、ゆっくりと倒れてくる。
と、その時。
「くそっ!」
「何とか持ってよ! プリアモンドが向こうに着くまで!」
リュシアンとエティエンヌがトリシアを挟むようにして、自分たちの体で大岩を支えた。
大岩の重さは、恐らくトリシアたち三人の体重を合わせた五十倍はあるだろう。
もし崩れれば、三人ともその下じきだ。
「無理よ! あなたたちまで巻き込まれちゃう!」
二人を止めようとするトリシア。
しかし。
「今この岩が動けば、向こうの鉱山妖精たちが危ない!」
長い黒髪をふって、リュシアンはこらえた。
「プリアモンドは、みんなといっしょに必ず戻るよ!」
エティエンヌも叫び、背中を岩に押し当て続ける。
「だから! あとちょっとだけ頑張る!」
「……ええい! 人間どもだけに任せておけるか! ここはわしらの地下道だ!」
ためらっていた妖精たちも加わって、岩を押さえた。
それでも、岩が傾いてくるのを止めることはできない。