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「やっぱり、先生にはかなわないな」
塔から下りて、騎士団がゴブリンを網から出しているところまでやってくると、レンは頭を振った。
「あんな魔法で、ゴブリンを捕まえちゃうんだから」
「君が作った魔法だろう? 誇りを持つんだ。君は優れた魔法使いだよ」
アンリはレンの肩に手を置く。
「さて、こいつらだが……」
プリアモンドは網の中のゴブリンたちを指さした。
「ゴブリン大王のところに送り返そう。二度とこんなことをさせないように手紙をつけて」
「もっといい手があるよ」
トリシアはウインクすると、ゴブリンたちに近づく。
「いい? 今度こんなことをしたら、あなたちを……」
「お、俺たちを?」
ゴブリンの親玉は、ゴクリと唾を飲む。
「お風呂に入れるわよ」
トリシアはささやくように告げた。
「ひーっ!
「なんて残酷な娘っ子だ!」
「分かった! もうしません! だから、お風呂だけは勘弁してくれ!」
お風呂と聞いて、ゴブリンたちは震え上がった。地下に住む生き物にとって、水は恐ろしいものなのだ。
「これでもう大丈夫」
トリシアはプリアモンドを振り返った。
「なんて言ったんだ?」
眉をひそめるプリアモンド。
「……聞かない方がいいと思う」
と、トリシアが肩をすくめたその時。
「あのー、そろそろ助けてもらえますかー」
落とし穴の底から、フィリイが訴えた。
「ったく、足手まといが」
リュシアンは落とし穴の縁に立ち、手を伸ばした。
「ありがとうございます、リュシアンさん。フィリイちゃん、あなたにあっつぅぅぅーい口づけを捧げちゃいますねー」
フィリイはリュシアンの手を握って這い上がると、ペタンと座って目を閉じ、唇を突き出す。
「……」
リュシアンは、人差し指でトンとフィリイの額を突いた。
「あれえー!?」
どさっ!
フィリイはバランスを崩してひっくり返り、また穴の中に落ちる。
「一生、そこで反省していろ」
リュシアンはフンと鼻を鳴らし、落とし穴に背を向けた。