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しばらくして。
「で、ベリーか? それも生の? シロップで煮てもいないし、ホイップクリームも、蜂蜜も添えていない?」
ライムが採ってきたラズベリーやブルーベリーを見て、セドリックは不満そうに眉をしかめた。
「肉が食べたいのに、ベリーを食べろと?」
「無理ですよ。僕にイノシシでも穫れって言うんですか?」
「牛肉がいい。フォーク押しただけで崩れるほど、よ〜く煮たシチューがいい」」
「もっと無理です! ここ、森の中ですよ」
「そうなのか? よし、森に野生の牛はいない、と」
セドリックは日記を取り出して、木炭のペンでメモを取る。
「うむ、ひとつ勉強になった」
「…………」
ライムが言葉を失ったその時。
「誰か! 助けて!」
女性の悲鳴が森に響きわたった。
「美女の助けを求める声だ! 行くぞ、我が従者!」
セドリックは、声が聞こえてきた方に向けて馬を走らせる。
「どうして声だけで美女だって分かるんです!?」
ライムがあわてて後を追う。
やがて、二人の前に見えてきたのは、女の子を囲む人相の悪そうな男たちだった。
「待て待て! 少女を襲う悪党ども! 気高き騎士が相手になるぞ!」
セドリックは剣を抜いて馬から下りーーようとしたが、馬から落っこちて、その拍子に剣が抜けた。
「なんだ、こいつ?」
男たちはきょとんとした顔をセドリックに向ける。
「我が名はセドリック! 王都アムリオンを守る、勇敢で顔がいい、正義の騎士である!」
と、宣言してからセドリックはハンカチを取り出し、服についた泥を払った。
「覚悟しろ!」
セドリックはハンカチをていねいにポケットに戻すと、剣を拾って男たちに向かって走る。
「相手は三人ですよ!」
ライムが叫んだ。
「大丈夫だ! 根拠はないが、自信はある!」
と、セドリック。
「こいつ、やる気か!」
「邪魔をするな!」
男たちも剣を抜いて身構える。
「言っておくが、今まで僕の前に立ちはだかって、無事だったものはいない!」
セドリックは剣の先を男たちに向けた。
「ほ、本当か!?」
男たちはちょっと後ずさる。
「本当だ! 今まで誰も、僕の前に立ちはだかっていないのだからね!」
「…………」
ライムが額に手を当てた。
「さあ! 僕の強さに驚くがいい! ていっ!」
セドリックは男のひとりに駆け寄ると、剣を振りおろした。
「おっと!」
切りかかられた男は、自分の剣で払いのける。
キンッ!
セドリックの剣の先がポッキリと折れて、地面に突き立った。
「剣が折れましたよ!」
真っ青になるライム。
「大丈夫だ!」
長さが半分になった剣を手にしたまま、セドリックが胸を張る。
「買って十日以内なら返品可能、とお店の看板に書いてあった!」
「どうしてそんな変な店で買うんです!」
「マイルズはなかなかいい商人だぞ? 僕のことをとっても誉めてくれる」
「今、そんな話をしている場合ですか?」
「君はどうも余裕にかけるなあ」
唇をとがらせるセドリック。