- ──学校一斉休業は、学校の存在意義を見直す機会になったように思います。
- 大臣昨年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、全国的に学校の臨時休業措置がとられ、地域によっては約3か月もの長期にわたって 子供たちが学校に通えない状況が生まれました。その際、様々な問題が生じたことによって、学校は学習機会や学力を保障するという役割のみならず、全人的な発達、成長を保障する役割や、居場所、セーフティネットとしての福祉的な役割も担っていることが再確認されたと思います。
- ――そのことについて、各地のお子さんともお話をされたそうですね。
- 大臣ある子は、「あんなに行きたくないと思っていた学校が、行けなくなると、すごく愛おしいものになった」と言いました。また、不登校だった子が、ほかの子のことを心配して「みんな学校に行けなくて気の毒だ」と言ったという話も聞きました。
学校は、単に知識を伝達する場ではなく、人と人との関わりの中で、人生や社会を見据えて学び合う場なのです。GIGAスクール構想が進展し、一人1台端末の環境が整ったとしても、学校教育がオンラインだけで成立することにはならないと考えています。 - ――大臣は、オンライン授業において、学ぶ子供のそばに先生がいることの必要性に、かなりこだわっていらっしゃいました。
- 大臣基本的に学校というのは対面で行うものであると考えています。
ICT環境が整えば、学校の先生はいらないのではないか、授業の上手な先生が遠隔から授業をやるほうが子供たちのためになると言う人もいます。でも、学校は塾や予備校ではありません。先生が、クラスの子供たち一人一人の変化や成長の過程を見て、発達段階に応じた支援をすることが大切です。
先生方には、学習機会や学力の保障という役割に加え、人として成長していくことをしっかり支えていただきたいと思います。 - ――オンラインではできないこともありますね。
- 大臣コロナ禍で、オンラインの便利さは実証されましたが、全てに代替するものではありません。深く学んだり、意見を交換したりするのには、オンラインだけでは不充分です。
ただこれは、一概には言えないところもあります。オンラインの使い方は、発達段階でフェーズが変わるものだと思います。発達段階が上がれば、オンラインを上手に使って学びを深めるということもできるようになっていくのだと思います。
今回は、緊急避難的にオンラインを使いました。これから、GIGAスクールの環境が整備された中での遠隔・オンライン教育の在り方をどう評価するかということについては、現場でスモールステップで確認しながら、丁寧にルール化していきたいと思います。 - ――今後、学校も大きく変わっていきそうですね。
- 大臣まさに、これから目指していく学校教育を、「令和の日本型学校教育」というように捉え、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実していくこととしています。
これまでは、クラスや学校の中で「理解が深まっているよね」とか「ここはわかりづらいね」ということを分析していました。
ICT環境が整備され、その活用が進めば、スタディ・ログ(学習履歴)を積み上げて、「やはり、ここは子供たちにわかりづらいのだ」と分析し、結果を全国で共有することもできるようになります。さらに、良い解決策があれば、それを直ちに横展開することもできます。
こうしたデータを上手に活用し、児童生徒の特性に応じたきめ細かな対応が可能になるなど、子供たちの学びや指導の在り方が、大きく変わっていくと思います。 - ――授業はどのように変わるでしょうか。
- 大臣例えば先日、沖縄の石垣島へ視察に訪れた際に、先生から面白い話を聞きました。国語の時間に雪の詩を読みますが、石垣の子ども達も、教えている教師も本物の雪を見たことがないんです、とおっしゃったんです。それを聞いたとき、雪が降らないところで、その叙情的な感性をどうやって磨いていくのか、すごく難しい面もあるかもしれないなと思いました。でもこれからは、北海道や青森の学校とオンラインで繋いで、例えばその雪景色の中で雪の話をしてもらうことができる。あるいは星の勉強をするとき、東京の子たちは空にたくさんの星があるなんて知らないけれど、石垣の空は南十字星をはじめ、多くの星が輝いているということを石垣島から教えてあげる、なんてこともできるでしょう。ICTツールを上手に活用することで、子ども達がこうした「深い学び」を経験できるようになると思います。
- ――教師の役割も変わりますね。
- 大臣「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る中では、子供の主体的な学びを支援する伴走者としての教師の役割が、更に重要になるものと考えています。
例えば、同じ授業で全員が画一的に進むのではなく、同じ45分、50分を上手に使って、授業に遅れがちな子、あるいは“吹きこぼれ”と呼ばれるような、優秀で授業の先を行くような子に対して、それぞれの進度に応じた課題に取り組んでもらうことができると思います。個別最適化された環境のなかで、ひとりひとりのオーダーメイドの授業を、ぜひ目指してもらいたいと思います。 - ――逆に、変わらないものは。
- 大臣全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育む日本型学校教育の本質は、令和の時代にあっても変わるものではないと思います。
教師による対面指導や子供同士による学びの機会を提供する学校の重要性は、これからもどんどん高まっていくものと思います。学校という場に集うということに、意味があるのです。この線は常に念頭に置いていたいですね。
また、清掃活動や給食当番、学校行事なども含めて学校教育全体で多様な他者との対話や協働を通じて新しい解や皆が納得できる解を生み出していくことで、子ども達は社会性や人間性を養います。こうした学校教育の良さは、令和も変わらないと考えています。