和声の変化で一番大切なのは、なんといってもドミナントの緊張から、トニックに到達する、その弛緩・開放です。
色とりどりのハーモニー、そのひとつひとつの変化を表現しようとすると、なんだか大掛かりな感じがしてしまいますが、このドミナントとトニックの連結、特に、曲の締めくくりや、場面の変わり目などにある『大きな終止』を見つけて大事に弾く、それだけで、ひと味違った和声感のある演奏になるんです。
この『大きな終止』のとき、一定のテンポの中で多少減速することは、ごく自然に行われています。楽譜にはrit.と書かれていなくても、自然とテンポがもたついたり、揺れたりする、これがまさに、和声の美しさが生む表情であり、アゴーギクになるんですね。
ドミナントは、一般的な音楽において、とても重要な役割を果たしています。ドミナントが、トニックへ向かいたがるエネルギーを、場面に応じて大切に扱うこと、これこそが、和声感のある演奏につながる、はじめの一歩だと思います。
【回答してくださった先生:轟 千尋先生】
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