第四回
ちょうど同じころ。
ショーンもまた、中央広場にやってきていた。
深紅(しんく)のフードをかぶり、むらさきのマントを羽おったかっこうだ。
こっそりおしのびでやってきたつもりらしいのだが、目立つことこの上ない。
「おっ! ぼっちゃん! いいブツが入ってますぜ!」
いせいのいい屋台の主人が、そんなショーンのすがたを見つけ、声をかける。
「し?っ! 声が大きい!」
ショーンはくちびるに人差し指を当てた。
「で、どんな種だ?」
ショーンの目当ては、この屋台の商品。
花の種だった。
花は好きだが、騎士(きし)を目指す者として、そんなやさしげな趣味(しゅみ)が人に知られるのははずかしい、とショーンは思う。
だから、時々、だれにもばれないように、へんそうしてここをおとずれるのだ。
「これがおどろいちゃいけませんぜ」
オヤジは目配せする。
「なんと……むらさきのバラなんでさ!」
「ほう」
たしかに、アムリオンではあまり見ない種類だ。
「かおりもかなりいいって、北方帝国(ていこく)では大ひょうばんで」
「ひょうばん?」
ショーンはフードの下のまゆをひそめた。
「お前はそのかおりをかいだことはないのか?」