第二回
「では、改めて」
ショーンが出走位置につくと、副騎士団長はせきばらいをし、白いハンカチを持った手を高くかかげた。
「位置について……用意!」
フワリ。
と、ハンカチが、副騎士団長の手をはなれたしゅん間。
ドドドドドッ!
受験者の乗った馬たちが、いっせいにかけだした。
……のだが。
「……やっぱり」
アーエスは、予想通りの光景に肩をすくめた。
「ええい! まっすぐ走らんか! こら~っ!」
ショーンの白馬だけが、いきなりおくれて、同じ所をグルグル回っていたのだ。
「何やってんのよ、ショーン!」
さすがにもう手助けはできないベルは、応援席から身を乗りだしてどなる。
「そっちじゃないでしょ! だから、ちゃんと手綱を持って! ああもう、見てらんない!」
「……でも……これで……いいような……気が? このままなら……計画通り……ショーンの……不合格……確実に……」
と、アーエス。
「そ、それはそうだけど!」
ベルはあわてて言いわけした。
「って、ほら! あ、あんまりひどい成績だと、あいつと同じ学校に通うあたしたちまでバカにされるじゃない!」
「……なるほど……一理ある……かも……じゃあ……ちょっとだけ」
アーエスは少し考えてからなっとくすると、小声で魔旋律を唱える。
「ちっちゃなメラメラ……飛んでっちゃえ……バラク……ティール」
指先で生まれた炎(ほのお)の球が、ひゅ~っと白馬のおしりのあたりまで飛んでいって、パーンとはれつした。
ブヒヒヒ~ンッ!
おどろいた白馬は、とつぜん、考えられない速度でしっそうし始める。
ダダダダダダッ!
「わ~っ! 急に走るなああああ~っ!」
悲鳴をあげ、必死になってくらにしがみつくショーン。
「……ほら……速くなった」
アーエスは、会場を後にする白馬を見送り、満足そうにうなずいた。
しかし。