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今夜、トリシアたちが見回るのは、南街区。
道が迷路のように入り組んでいて、見回るのはかなり面倒だが、適当に自分が選んだのだから仕方がない。
「平和みたいだね?」
十数匹のネズミに囲まれて狭い路地を回りながら、トリシアはあくびをしていた。
真夜中なので、一部の酒場や宿屋をのぞいては、店はみんな閉まっており、人通りも少ないのだ。
「いえ」
デュドネは剣を抜いたまま、あたりを見回し、鼻をひくつかせて答える。
「悪はどこに潜んでおるか分かりませんぞ。街の人々を脅かす機会を、常にうかがっていると考えておくべきです」
「へえ、そうなんだ?」
こと南街区においては、騒動を起こすのはトリシア本人かその仲間の誰かであることがほとんどなのだが、トリシアにその自覚はない。
「決して油断なされぬように」
デュドネは念を押すと、次の路地へと向かった。