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「団長、またも我々の勝利です!」
と、うれしそうな声を上げるコニャーズ。
「……ひとつ聞くけど、いつもこんな感じ?」
トリシアはコニャーズにそっとたずねる。
「いえいえ、今夜のようなすばらしい戦果を上げられたことは今までにはありません」
「じゃあ、さっきのが?」
「銀ネズミ騎士団の歴史にさんぜんと輝く初勝利です!」
コニャーズはうれし涙を流した。
「いつもはドラゴンに追いかけられ、トロルやゴブリンの攻撃をしのぐのがやっとでした。さすが、団長がいらっしゃられると、騎士たちの志気が高まります」
この様子ではたぶん、ドラゴンやトロルというのも、野良犬や野良猫のことなのだろう。
「……こんな調子で、毎日見回るんじゃないでしょうね?」
「毎日、毎晩です!」
と、言い切るコニャーズ。
「あ、悪夢」
トリシアは団長を辞めたくなってきたが、このネズミ騎士たち、ずっと見張ってないと何をするか分かったものではない。
そんな心配をよそに、副団長のデュドネはトリシアの肩に駆け上って、部下たちを見渡した。
「諸君! 今夜はワイヴァーンとクラーケンという恐ろしい敵を、二匹も退治することができた! これが新しい団長のおかげであることは、論を待つまでもないだろう!」
デュドネはトリシアの耳元で拍手を送った。
「トリシア団長のもと、我々銀ネズミ騎士団は、これからも街の平和を守っていくぞ!」
「お~っ!」
「……もう、好きにして」
トリシアはもう、うなだれるしかなかった。
魔法使い、医者、それに加えて騎士団長。
三つ目の肩書きが加わったトリシアだが、一日銀貨一枚で見合う仕事ではなかったことは言うまでもない。
(おわり)
…トリシア騎士団長、誕生!? ぜひ、白天馬騎士団との対決も見たいかも!