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「こうなったら」
「……ああ。あいつだけは」
筆記試験の時からレンのことを敵視していた貴族たちが頷き合い、隠し持っていたらしい短剣を取り出した。
短剣を握ったふたりは試験監督のプリアモンドに背を向けているので、プリアモンドには短剣は見えない。
「レン殿、危ない!」
だが、ショーンが気づき、その連中に頭から突っ込んでいく。
「っ!」
ショーンの体当たりを受けて、短剣を握った貴族たちは地面に転がった。
「ショーン!」
レンはショーンに駆け寄った。
「怪我はないが、僕も失格だ」
気を失った貴族たちの上に座り込んだショーンは、笑顔でレンを見上げる。
「勝ち進んでくれ、僕の分まで」
「ああ」
レンは頷いて、残った数名の貴族たちのところに向かった。
「それまで!」
レンがもうひとりの貴族を倒したところで、残り3名となり、二次試験は終了した。
「レン先輩を助けてくれたんだね?」
会場を後にするショーンに、ベルが声をかける。
「仲間の危機を助けないようでは、恥ずかしくて騎士になれないからな」
ショーンは立ち止まると、汚れた顔をこぶしでこすって背を向けた。
「いつもは試験で負けると悔しくて仕方がないのだが、今回はそうでもない」
「……!」
ベルはショーンを背中から強く抱きしめる。
「かっこいいじゃん。ショーンのくせに」
「よ、よせ」
ショーンはそう言ったが、邪険に振りほどこうとはしなかった。
「……今度は……私の……お守りを……買うように」
アーエスがショーンの手に手製のお守りを握らせる。
「これ……売れ残ったから……サービス……特別に……銀貨3枚で」
「ありがとう」
と、ショーンがアーエスの頭を軽く叩いたその時。
「ショーン」
副騎士団長のシャーミアンがやって来た。
「シャーミアン殿?」
振り返るショーン。
「今日はご苦労だったな」
「また駄目でした」
晴れ晴れとした顔でショーンは頭を下げた。
「私は君よりもずっと多くこの試験に落ちてきた」
シャーミアンは言った。
「そんな私だから分かる。誰よりも誠実で、誰よりも友を想う君は、いつの日か、この白天馬騎士団を支える騎士となるだろう。君の兄たち、サクノス家の3兄弟を超える」
シャーミアンの手が、ショーンの肩に置かれた。
「期待しているぞ」