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「先輩!」
ベルがレンのところに駆け寄り、抱き起こそうとする。
「……うん、気を失っているだけだ。大したことはない」
ショーンが怪我の様子を確かめ、安心させるようにベルに告げた。
「そ、それって今、私がキスしたら魔法で目が覚めるくらいに軽い怪我ってこと?」
「…………」
アーエスが無言でベルをレンから引き離した。
「トリシアちゃん、呼ぼうか?」
やや遅れて、エティエンヌたちもレンのところにやってきた。
「彼女には自分で知らせたいだろ? 野暮は止せ」
と、プリアモンド。
「うわ、プリアモンドに野暮って言われた~」
「……お前な」
「仕方ない」
リュシアンがレンを抱き上げる。
「医務室には俺が連れていく。ヤブ医者のアンガラドの手当でも、しないよりはましだろう」
「とにもかくにも、新たな騎士の誕生だな」
リュシアンの背中を見送りながら、頷くシャーミアン。
「まだまだ、見習いだけどね」
「それ鍛え上げるのも、私たちの仕事だろう?」
エティンヌとプリアモンドは笑みを交わすと、リュシアンのあとに続いて医務室へと向かう。
レンが魔法騎士を名乗れる日は、まだまだ先、のようだった。
(おしまい……魔法医トリシアの冒険カルテ1巻「ドラゴンの谷となぞの少年」につづく!
レンが騎士になったと知った時、トリシアは……? ぜひチェックしてみてね♪)